筆者はPSPを未だ現役メンツとして遊んでいますが、今回は「遠隔捜査-真実への23日間-」という、PSPでしか遊べない&知名度激低(公式サイトすらない)な1作の感想をあえて書き残しておこう(笑)と思います!
「遠隔捜査-真実への23日間-」とは?
「遠隔捜査-真実への23日間-」は、2009年にSCE(Sony Computer Entertainment Inc.)より発売された1作。CEROは12歳以上対象の[B]。
2024年現在遊べる機種はPSPのみとなっており、今回筆者はディスクを購入しました。
筆者のクリア時間は約8時間。サクッとお手軽に遊べるボリュームだったと言えるでしょう。
データインストール機能がついていますが、インストールせずに遊んだからか結構もっさり動作は鼻に付きました(だからこそのインストール機能だと思います)。
ちなみに現在のレトロゲームの価格相場からするとめちゃくちゃ安価帯にいる作品なので(笑)、少しでも気になったらとりあえず購入しておくのはアリです。
あらすじ
私立探偵・斉藤光志(主人公/プレイヤー)は、バー「ライトブルー」のVIPルームで発生した殺人事件の容疑者として逮捕されてしまう。
さらに当日(事件が起きた際)は酔いつぶれていたせいで記憶が一切なく、無実を証明できない…。
そんな中、留置場に拘束された光志のもとに接見に現れたのは、元彼女で弁護士になる夢を叶えた新城法子だった。
拘留中で身動きが取れない自分に代わって、担当弁護士となった法子に行動を指示する&協力することで、無実を証明するための手がかり【クルー】を集めていくことになる。
タイムリミットは拘留期限の23日間。
限られた時間の中で真実を得るための戦いが始まる…。
システム/コンセプト
ゲームシステムは以下、拘留中の23日間は毎日(ほぼ)同じ流れを取っていきます。
【経過報告】…法子に前日の成果を聞く(クルーの取得&整理)
【行動指示】…本日の法子の行動場所(午前/午後)を指示
【接見】…光志に会いに来た関係者に話を聞く(クルーの取得&整理)
【取調べ】…クルーを活用して、警察からの尋問を突破/論破する
本作のコンセプトとしては、主人公が拘留された状態でのスタートであり、自身で(思いのままに)行動を取ることが出来ないこと。
そこで、気心の知れた元恋人が(都合よく)担当弁護士になってくれたことから、彼女を自分に置き替えて動かすこと。
すなわち、ここがタイトルの『遠隔(で行う)捜査』に繋がっていると言えます。
ここにクリアへの条件(ゲーム性)として、【行動を指示&情報共有】…法子に訪問先/対象者/聞くことを指示し、それによって手に入る(証拠、アリバイ、秘密などの)情報である【クルー】の取得有無/その数/整理ができているかが重要となります。
そして【取調べ/尋問】に際して手に入れた【クルー】を使って(駆使して)、警察と渡り合う、心証を獲得するという流れとなっており、作中の要素の連動性は高いです。
プレイヤーからすると、光志も法子も本人視点で操作するため、指示を出すことが二度手間に感じてはしまうのですが(笑)、関係者が多い点から必然的に多数の情報を聞き出したり、整理して繋げていく中で、法子が部外者であることや弁護士という立場から「法子だから知れる、分かる、理解できることがある」と思えます。
すなわち「光志ならその情報は教えて貰えないだろう/法子だから手に入った」となる場面が多くあり、彼女が(光志の代わりに)行動を取ることになる/それが事件を解決する上で非常に重要であるという本作のコンセプトに納得が出来る構成となっています。
逆に法子が持ち帰った情報を光志と共有することでしか起こらない(であろう)、光志しか知り得ない事柄が起点となる【クルー】の整理や、ひらめきといった、彼にも見せ場が用意されており、2人(被疑者と代理人)それぞれに活躍をする場面、お互いで補い融合するという魅力も味わえます。
全体的な感想
プラスポイント
主人公自身が行動を取れないという特殊な状態以外は、典型的な構成と言ってしまえばそれまでですが、少しずつ順を追って事件の真相に迫っていく流れとその中における情報の開示やタイミングは悪くなかったです。
本作に隠されたトリックやテーマが多少突飛な題材がらも、筆者は腑に落ちたという点ではエピソードに貫き通せる説得力があったと言えます。
(ベタですが)絡まった糸を解く必要性(何故絡まっていたのか含め)、犯人がその行動を取ったことと、そこに至る背景(これまで)が語られたところも理解を示せて、結果として物語は過不足なくキレイにまとまっていたと思います。
そして冤罪を証明するために対峙することになる三浦刑事や補佐の吉本刑事の淀みない正義感は光志にも通ずるものがあり、お互いの立場がありながらも意見を交わすことで理解を深め、最大限の協力の姿勢を取る場面は気持ちよく読み進めることが出来ました。
あと、筆者は普段は(耳が肥えていないので)声優に言及することはない/出来ないのですが、本作については、主人公の光志の声優である小野大輔氏の演技が印象的でした。特に言い合いになる場面や理不尽な展開での感情がこもった凄み、重みが、プレイヤーが受けたやり場のない怒りも乗せてくれていて非常に物語世界に入り込めました。
システム面では以下で整理されています。
専門用語…【辞典・解説】
登場人物たちの関係性…【相関図】
未解決の疑問…【尋問一覧】
持ち合わせている情報一覧…【クルー】
いずれも混乱してしまいそうになる情報たちはメニューで都度確認ができるように配慮されています。
マイナスポイント
個人的にモヤっとしてしまったポイントもいくつかあります。
まず三浦刑事からの【取調べ/尋問】が、光志へ行動を取らせる(捜査させる)ための投げかけ(なぜか警察側からの情報提供が起点)の場になっており、光志側はその問いで現在明確にしたい事項を知るという流れになっています。
そして質問の初回は【クルー】を手に入れていないがゆえの”知らない”/”分からない”=【黙秘権】を行使することになります。
ここを起点として翌日に法子に(対象者へ聞き取りに行く、調べにいくように)行動を指示するため(その結果が分かるのはさらにその翌日以降)、少なくとも2日連続で【黙秘権】を行使し、刑事側の心象を悪くするというだけの義務行動、めんどくさいルーチンワークを行います。
これが質問の数の分だけあるので、かなりの頻度で繰り返される【黙秘権】の行使→印象悪化に無意味さを感じてしまいます。
さらに鼻に付いたのが、本作では《誰もが人を疑うことを知らない性善説ありきの裏付け》で進行していくこと。関係者本人の言葉を聞いたまんま持ち帰り、それが正解(正しい)として警察側と共有。さらに警察側もそれを受け入れて証拠として扱われていきます。
すなわち都度/その場で/誰かが《疑う》ということが一切ないのです。
発言に1つずつツッコむのが正解とは思いませんが、それぞれの立場や関係上、至って現実的な思考や感情をプレイヤーが持ち合わせている場合は違和感を抱いてしまうはずです。
光志は、(誰かに)冤罪の濡れ衣を着せられていることや、会ったこともない人がいる点など含め、疑わしき他人の話をなぜ信じられるのか?
警察は、拘束までしている人物(光志)が「調べてきた!」と言っているだけの情報をなぜ信じられるのか?(自分たちで調べないの?)
仮に『本作はそういう(人を疑わない)世界観/ルール』だとして、最後までブレがなければここまでは言わなかったのですが、ご察しの通りそこが甘いのです。
最終的な辻褄合わせ(真相)に際して「(そのことは聞かれた時に)嘘をつきました」=「その件は存在していませんでした、めでたし!」という裏切りの答え合わせは反則技でしかなく、この点については腑に落ちずモヤモヤしてしまった点です。
さいごに
最後に注意点です。
ジャンルは『冤罪証明バトル』とされている本作ですが、言っている割には(そこを目的としているならイマイチという意味で)バトル性は高くはないと言わざるを得ません。
この点での面白さを本作で得ることは難しいです。
プレイヤーにどのカード(【クルー】という持ち駒)を切るかという推理を含めた選択肢はあるものの時たまにレベル。
基本的にはノベル(読み物)の要素が強く、毎日の【訪問場所決め】は重要ではあるもののもはやそれだけというか…その先は(半自動的に)用意された質問を投げるだけ/相手から聞くだけといった流れで、プレイヤーとして介入することは特にないのです。
質問の内容は固定で、順番や過不足が引き起こす誤解や勘違い的なイレギュラーな展開もないため、ただ読み進めている(義務的作業)という印象は否めません(それは好みなので良くも悪くもあると思いますが)。
前述していますが、どちらかというとノベル系(寄り)の作品が好みの方にオススメの1作といえるでしょう。
© 2009 Sony Computer Entertainment Inc.