先日ゲーミングPCを購入し、Steamデビューだ!インディーゲームやるぞー!ということでオススメを募り教えていただいた「A Short Hike(ショートハイク)」をプレイしました。
さいっこうにやさしくって、あたたかい傑作でした!以下感想&レビュー記事です。
「A Short Hike」とは…?
「A Short Hike」はカナダのインディーゲームスタジオ「adamgryu」が開発したアクションアドベンチャーゲーム。
2019年からSteamにて配信されており、現在はPS4やSwitchでもプレイが可能(ダウンロード専用タイトル)。すべて日本語に対応しています。
今回筆者が遊んだのはSteam版で、価格はセール(35%OFF)で533円でした(定価820円)。Switch版は定価830円、PS4版は定価880円です。
ちなみに本作は2020年にインディーゲームアワード「Independent Games Festival(IGF )」で最優秀賞(グランプリ)を受賞していることも相まって期待値を上げた状態でプレイしました。
環境(グラフィック)
まず本編に入る前に…ちょっと珍しい?要素でゲームピクセルサイズ=ドットの強度が5段階あり、いつでも変更が可能です。
《最小》にすると低解像度=ドット感が強めのレトロな印象、《最大》だと滑らかでポップな印象になります。
今回は見やすさ(紹介しやすさ)を重視して《最大》設定でプレイしました(記事内のスクリーンショットは《最大》設定でのものです)。
ゲームボリューム
ゲームクリア(要素)だけに限れば、約2時間ですが、クリア後も継続してプレイ可能です。
筆者は実績全取得まで楽しんで約5時間でした。
どちらにしても(価格込みで)気軽に手軽に遊べる作品といえるでしょう。
あらすじ
物語は小鳥のクレア(♀)が、叔母の車に揺られ都会から田舎と呼ばれた”どこか”に向かっているところから始まります。
そして2人がやってきたのは「ホークピーク州立公園」という自然豊かな島。
そんな「ホークピーク州立公園」での夏のある1日のはじまり、クレアは(誰かからの)携帯電話への着信を待ちわびている様子。
しかし田舎ゆえに電波が入らない(圏外である=電話は鳴らない)ことを叔母のメイから知らされ、クレアは電波を求めて島で一番高い場所である、ホークピークの山頂を目指す。というのが本作の目的(クリア目標)になります。
ゲーム全体の感想
(最終)目標
クレア(主人公)が《山頂を目指す》と一言にいっても、歩いて登る”だけ”というわけにはいかず、【黄金の羽根】と呼ばれる体を軽くして飛び上がらせてくれるアイテムが一定数必要になります。
この【黄金の羽根】の特性は最大20枚収集が可能で、集めた枚数分だけ効果を発揮します(所持枚数は画面左下に表示)。
①:ジャンプ
…連続で飛び上がっていくことが出来る(2個なら2段、5個なら5連続)。
②:クライミング…崖(壁)を伝って登っていく持続が可能(枚数分連続カウント)。
すなわち羽根を集めた分だけ高い場所へと行ける(行きやすくなる)=散策場所が広がる=山頂(電波)に近づけるということです。ジャンプとクライミングは使い分けが必要な場所もありますが、どちらもどこででも発動が可能です。
そんな【黄金の羽根】は「ホークピーク州立公園(島)」内を散策することで集めていきます。
・島内のいたるところにある(隠されている/落ちている)ものを見つける。
・町の住人と関わること(お手伝い/ミニゲーム)で報酬として手に入れる。
これはプレイヤーがクレアとして島内を満喫する中で【黄金の羽根】が集まっていく(気づいたら集まっていた)という、イベントと目的が直結したものになっています。すなわちエリア(自然)とキャラクターの魅力が最大限に生かされている構造と言えます。
【黄金の羽根】を集めるごとに行けるエリア(範囲・高さ)が段階的に広がるのもワクワク感が増します。集めれば集めるだけ移動が快適になることを操作性として実感、体感出来るのもうまいところ。
羽根の収集において順序や制限など強制力はなくプレイヤー主体の進行が可能なオープンワールドスタイルです。
羽根が一定数集まっていないとホークピークの山頂には到達できないように障害物(高さ)もうまく仕掛けられてはいますが、羽根を必死で集めなければいけないというほど数を要求されてはおらず、つまづいてしまうようなこともありません。
ストレスのなさ/難易度の低さも作品の魅力の一つです。
自由度の高さ
ここまでに書いてきた中ですでに触れていますが、本作には登頂目標(羽根収集)以外の制約はありません。
減少要素も、制限時間も、戦闘も、ノルマも、ゲームオーバーも、何もなし!自由度は極めて高いです。
公園内は(島なので)海/砂浜あり、山ありの起伏に富んでおり、キャンプエリアのような開けた場所、ハイキング/ランニングコースのような整備された道もあれば、木が生い茂る未整地ゾーンや海上、人気のない小島、雪山など表情は多岐にわたっています。
ランドマーク(建造物)に天気の違いまであり、ただただうろうろするだけでも探検/ハイキング気分を味わうことが出来ます。
制作者であるRobinson-Yu氏は「どうぶつの森」シリーズや「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」に影響を受けているとの発言がありますが、本作はまさにそれらのいいとこどりといえます。
筆者はオープンワールドや自由度の高さが売りの作品においてメリットであるはずの要素に、”広すぎる”、”ありすぎる”を感じてしまいがちなのですが、その点で本作は「無」の空間が少なく、何をすべきかも溢れる前に対処が可能と適度にコンパクトにまとまっている印象です。
作業感やマンネリが生れることもないまま刺激だけを味わう、まさにインディーゲームだからこその良さが存分に発揮されている作品といえるでしょう。
個性的な住人達
自然はもちろんのこと住人としてたくさんの動物種と個が島内には存在しており、それぞれがそれぞれに趣味や仕事など目的を持ち、好きなことをして過ごしています(ちなみに作中に登場するのは動物のみ)。
クレアの小旅行的冒険における住人の介入濃度も非常にバランスがよく、イベントで注目されるキャラクター以外にも会話としてだけでも個性が確立されており「○○(場所)にいる▲▲の(をしている)あの子」といった個体認識が可能かつ、愛着が沸きます。
なにより住人を見つけ、ただ話しかけるだけでもワクワクします。
住人との交流によるパルクール勝負、ボートタイムアタック、ビーチスティックといったミニゲームも十分用意されており、ここで【黄金の羽根】をゲットすることもあったり…?
ミニゲーム自体の難易度も高くはありませんし、ペナルティもなくあくまでも”遊び”とその延長です。
アイテム
羽根集め以外にも多数のアイテムとその使用におけるイベントが存在しています。
・シャベルで穴掘り/宝探し
・つりざおで魚釣り(図鑑あり)
・バケツで”ゴムの花”に水やり=超ジャンプ
・つるはしでショートカットルートの開拓
量も適度かつ使用箇所(場所)も分かりやすく、継続的なアイテム使用によって飽きない探索が楽しめます。
唯一気になる人もいるかな?という点で、作中でマップは存在しておらず現在地点や島内の全貌を確認することは出来ません。
クエスト(おつかい)もあるので、キャラの位置などマップがある方がよかったな…と思う場面もありはしますが、基本的には目印となる建造物やエリアがあり、キャラも含め「◯◯の近く(にいる、ある)」という感覚で把握、記憶出来るボリューム(広さ)です。
個人的にはマップ(の確認)が必要なほど広くない=適度なボリュームで良かったと思いました。
グライド
ここまでに紹介した本作の魅力というべき、プレイヤー自身が自由にのんびりと公園(島内)を散策(とそれに伴うキャラクター交流)する上での”快適さ”の一つとして、高さのある場所からの移動において、クレアが鳥であるということと、島の起伏を生かした【グライド】=旋回降下(ボタン操作)があります。
この【グライド】は序盤から使用が可能かつ、段差程度の高さから発動できることによって移動に伴うストレスが軽減されています。
山の上のような高所からともなれば島を見下ろし風を切りながらぐるりと滑空が可能で、非常に爽快感がありました。
やさしさ
本作(のストーリー)を表現する中でなによりも感じたのは「やさしさ」でした。
色彩、キャラクターのかわいらしさ、BGM(音楽)もうなにを取ってもやわらかで、心穏やかな気持ちになれるのです。
BGMはフィールド上に常に流れているわけではなく、特定の場所(ポイント)ごとに異なっていることと、そこに近づくにつれて少しづつ音量が大きくなっていく(聞こえてくる)という特徴、工夫がなされているのも印象的でした。
BGMがない部分があるからこそ環境音も素敵だなぁと気づくことも出来ましたし、フィールドだけではなくイベントで流れた「Hello?」という曲が場面、セリフ(やりとり)も相まってグッときたり(後述)と、本作の音/音楽はとにかく印象に残るものでした。
制作者であるRobinson-Yu氏の作品紹介が素敵だったので記事を貼っておきます。
そして何よりも「やさしさ」を感じたのは、作中に生きているキャラクターとのやりとり/セリフです。
本作において、ただまっすぐに伝えるやさしさだけではなく、深みのあるワードチョイスの妙を感じました。これは「ローカライズの優秀さ」という言い方にもなるのかもしれません。
特にクレアという個の存在感と彼女の性格のセリフによる印象付けが素晴らしく、年齢というものが存在している(主張している)わけではありませんが、クレアが”少女”であるということを認識させてくれる彼女の無邪気さ、垣間見える都会っ子臭にクスりとしたり。
これは逆の視点、住人のクレアに対する応対にも言えることで、大人の存在による諭しがあったり、慕ってくれる手下(年下)がいたり、それぞれの立ち位置を踏まえた言葉選びとやりとりにおけるあたたかみを存分に味わうことが出来ました。
クレアが辿り着いた場所
最後にクレアが山頂に向かうほど電話(着信)を待っていた理由…。
その結末、描き方、セリフ(やりとり)にベタながらもじわっと来るものがありました。シンプルな言葉、文脈、間が胸を突く素晴らしい和訳でした。
最初から最後までずっとやさしい世界、ゲームをプレイしてあたたかな気持ちになれるという素敵な作品。
クリアまで約2時間とゲームとしては短い作品と言えますが1本の名作映画を見たような気分、本作に出会えたことを非常に嬉しく思える、心に残る1作になりました。
(C) 2019 Whippoorwill Limited