遅ればせながら、映画「オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」を劇場へ見に行ってきました!
(当時)Amazon Prime Videoにて独占配信されていた、アニメ「オッドタクシー」(全13話)にハマった筆者は、ムビチケを購入するほど映画の公開を待ちわびていたのですが、なんだかんだと入場特典が4週目にまでなったタイミングでようやく鑑賞してきました。
今回はアニメと映画の両方を見た筆者が、初心者向け/アニメ鑑賞者向けそれぞれに【Q&A】形式で作品内容を紹介します。
「オッドタクシー」とは…?
「オッドタクシー(ODDTAXI)」は、2021年4月から6月に放送されたP.I.C.SとOLMの共同制作によるアニメ作品です。
平凡な毎日を送るタクシー運転手・小戸川。
引用:「オッドタクシー(ODDTAXI)」公式サイト
身寄りはなく、他人とあまり関わらない、少し偏屈で無口な変わり者。
趣味は寝る前に聞く落語と仕事中に聞くラジオ。
一応、友人と呼べるのはかかりつけでもある医者の剛力と、高校からの同級生、柿花ぐらい。
彼が運ぶのは、どこかクセのある客ばかり。
バズりたくてしょうがない大学生・樺沢、何かを隠す看護師・白川、いまいち売れない芸人コンビ・ホモサピエンス、街のゴロツキ・ドブ、売出し中のアイドル・ミステリーキッス…
何でも無いはずの人々の会話は、やがて失踪した1人の少女へと繋がっていく。
本作は絵のタッチや主要キャラクターが動物の姿であることなど個性(クセ)があり、ストーリーの印象としても大人向け。さらに舞台は渋谷、SNSの影響力など現代と発信源を生かし風刺したような2020年代の今を生きる内容となっています。
そして多数のキャラクターの思惑と行動が交錯する群像劇が生み出す考察要素の多さから放送当時からネットを中心に話題に事欠かない作品であったように思います。
~全体的な【Q&A】~
まず大前提として2022年4月、今回公開された映画「オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」(以下:映画)は、公式サイトにて「アニメ版の再構成&後日談」と提示されており、それすなわち「総集編」+αと言えます。
というのも全13話のアニメ=おおよそ260分(約20分×13話)=4時間ちょっとの作品を2時間に収めているので「総集編」になるのは当然というべきで…(工夫は感じましたが)想像通りのダイジェスト感は否めません。
特に物語における主軸の部分をフォーカスした作り(流れ)になっているため、良く言えば端的に物語を楽しむことは出来ますが、悪く言えばそれ以外の部分(エピソード/小ネタ)は無きもの、または一言レベルで流されている印象です。”+α”はアニメの後日談で、これが映画版での新規映像です。
~初心者向け【Q&A】~
アニメを見たことがない初心者かつ、映画に興味を持った人が辿り着く最初の疑問ですね。
映画は前述のとおり「アニメ版の再構成&後日談」となっており、映画から見ても大丈夫です(公式からは”(タクシーにかけて)初乗り歓迎!”のおふれ書き)。ただし…アニメと映画の両方を見た筆者のアンサーとしては、「作品に興味を持ち調べるほどであれば、(映画から見てもいいのは大前提としつつも)”アニメから”見る方が断然オススメ」という回答になります(後述します)。
映画だけを見る(アニメを見ていない)としても、「オッドタクシー(オッドタクシー イン・ザ・ウッズ)」自体の物語を理解することは出来ると思います。
しかし(映画には映画の良さがありはしますが)端的に言うと映画はアニメで描かれた作品の魅力が”時間の制約によって”排除されてしまっているようにも感じました。
特に筆者が本作(アニメ)の魅力だと思っている「キャラクターの個性」「会話劇」「伏線とその回収」このどれもが映画において主軸だけを抜き取った結果、味わえない要素(省かれた要素)となっています。
「総集編」としてはこれらが(仕方なく)排除されたことに理解はできるものの、アニメから映画の流れを辿って描かれていない部分(魅力)があることを知った以上は、「映画が『オッドタクシー』(のポテンシャル)だと思って欲しくはない」という偉そうな気持ちがあります。
映画を見てからアニメに流れるのは大いにアリですが、映画を見た後に「アニメも見てみたい」と思う構図、立ち位置に映画はなれていない(なっていない)ように感じましたし、映画だけで「オッドタクシー」が完結してしまう、評価に直結するのは非常に勿体ないなと思います(見ていない方にネチネチ話してすいません…)。
~アニメ鑑賞済向け【Q&A】~
先に「総集編」と言ってしまったことと、巷の情報が先行したことで「映画は見る必要ないな…。」と思われてしまいそうですが、少ないながらもアニメを鑑賞済の人へアニメとはまた違った楽しみ方という「最低限の配慮と工夫」は感じられました。
特にアニメを見た方が気になる「後日談」は数分ではあるものの、「少しでもいいから”あの後”が知りたい!」と思っている場合は特に見る価値があると言えますし、”アニメのラストのさらにその後”が知りたかった筆者としてはとても満足できました。
ただし映画によって明確な(考察の余地を与えない)一つの「答え」が提示されたことになるため、アニメ版のラストのゾワっとザワっとで終わらせたままが良い(好きな)人には映画はあまり勧められないかなと。
ちなみにオーディオドラマでの出来事/幸せのボールペン絡みのエピソードも網羅されています(タエ子ママや長嶋のその後)。
映画では各キャラクターへの聞き取りのスタイルで、エピソード(イベント)に絡む当人がその時を話しながら物語の中心(出来事)をなぞるように進行しています。内容としては、最終日の前日までがダイジェストで、最終日はアニメのまんまに近いです。
この各者への聞き取り部分が新規映像(の一部)となっており、アニメの映像が中心ではあるものの飽きを防ぐ作りになっています。しいて言えば、映画の直前にアニメを復習しない方が良いと思います(大筋はほぼ同じなので(笑))。
新たな映像としては、聞き取りの際に登場するキャラクターとのやり取りと、後日談+エンディングのイラストあたり。
多い少ないは個人差があると思いますが、小戸川と白川さんの”その後”、特に白川さん推しはニヤニヤ出来ます。
まず映画とアニメの違いは「構成」にあると感じました。
特に印象的だったのは、映画ではその場で”答え”が提示されること。
映画は聞き取りという形で、当事者がその時を思い出しながら(簡潔に)出来事を話しているという構成のため、たとえば「呑楽消しゴム」を小戸川に渡したときの白川さんの思惑、和田垣さくらが小戸川のタクシーに盗聴器を仕掛けた経緯、小戸川の危機に際して埠頭に白川さんがいた理由など、アニメを見た際にネットが沸いた考察要素が、映画では目の前で当人の言葉によって真実がサラっと明かされていきます。
すなわち「考える」「推測する」余地は映画では与えられていません。
これについてはアニメリアタイ勢は考察ももうやり終えていますし、流石にいまさら「バラすなよ/考えさせてよ」なんて思う人はいないでしょう。
公式の答えとして明確な言葉で「あの場面」を回想出来るのは、アニメの考察ちりばめの構成の方が断然好きではありますが、これはこれで(映画にする/時間が経った今となってはこの方が)面白いなと思えました。
問いたいのは「アニメを見たあなたが『オッドタクシー』に対して感じた面白さはどこですか?」ということ。
たとえば筆者は「(主軸から少し外れてはいるけど)意味ある余白と人々の絡み(主に会話)」の部分にあると思っています。
特に何気ないやり取りも含めて物語が形成されているところに本作の魅力を感じたため、映画がそれらを味わえない、伝えられないのであれば(初心者を取り込みたいなら)映画ではなくアニメをすすめるという結論です(そのあと出来れば映画を見て比較して欲しい)。
映画ではそれぞれの歩み(これまで)がゴッソリと省かれているため、たとえば…田中のドードーへの思い入れが全く分からず、「ズーデン」でドードーをゲットして泣いた姿や、そのデータを失ったことで小戸川に恨みを募らせた重みが全く感じられません。結果として彼がただアプリゲームに狂って暴走した頭のおかしい悪人としか映っていないのです。
アニメ4話(名作/迷作)の「田中革命」が映画ではほぼまるのまま排除されているという衝撃をアニメを見たあなたなら残念に感じてくれるのではないでしょうか?
ほかにも、(主軸じゃないので仕方ないですが)ホモサピエンスのシーンもほぼほぼなくなっており、「黙れ表六玉」「ハイウェイとサブウェイ」「新大阪の喫煙所」「ラジオネームどこ住んでるん?って聞いてほぼ大阪って答えるやつ、だいたい尼崎」など筆者を作品に惹き込んだパワーワードにかかるやり取りは全く映し出されません(これが伝わる人と語り明かしたい!)。
筆者と同じように鋭いワードチョイスや一見おまけでしかないようなところと、のちの繋がりにおける衝撃に魅力を感じる人は、映画を誰かにオススメしたいとはならないような気がしています。
最後に不満点をひとつ。
映画では「黒田」が登場せず、大門兄がなぜドブと組んでいたのか、小戸川のこれまで、大金の使い道(行く末)など、アニメを見た人は補完で片づけられるとしても、初心者には大事なところが一切何も伝わらない(解決していないモヤモヤが残る)ように思いました。これすなわち「オッドタクシー」って結局なんの話?ということにすらなりえてしまうのではないかと…。
筆者の結論としては…
映画はアニメを見た人”には”、(それなりに)オススメ出来る。
初心者はアニメから見るべき!(その後に興味があれば映画を…)
以上!