【感想&レビュー】「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」~令和に味わう昭和レトロにオカルトをそえて~(ネタバレなし)

【感想&レビュー】「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」~令和に味わう昭和レトロにオカルトをそえて~(ネタバレなし)

久しぶりのクリア後感想記事は、半年ほど前にクリア済みで感想を書けていなかった1作「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」を紹介していきます!

「パノラマ」じゃなくて「パラノマ」ね!

以下、本作のSwitch版のスクリーンショットを掲載しています。ストーリーにおける核心的なネタバレを行っていませんが、スクリーンショットで読み取れる情報も多いかと思います。未プレイの方は閲覧の判断に十分ご注意ください。

目次

「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」とは?

「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」は、2023年に「スクウェア・エニックス」より発売された、オカルト&ホラーテイストのテキストアドベンチャーゲームです。

CEROは17歳以上の[D]と高めですが、ホラー的なグロさはCERO強度ほどではない印象で、題材と作中出来事に対するモラル的な要素による制限だと思われます(個人の見解です)。

ちなみに…(多くはないですが)あえて驚かしにかかる演出はあるので、苦手な方は注意が必要と言えます。360度パノラマ、振動、音を使った恐怖の煽り方がゲームならではで、ベタながらも上手いなぁ…と思わされました。

2023年現在遊べる機種は、Nintendo Switch、Steam、スマホアプリなど多数ありますが、ダウンロード専用タイトルとなっており、パッケージ版はありません(パッケージ信者の筆者としては残念ポイント)。

筆者は今回Nintendo Switch版を遊びました。

あえて挑んだ低価格帯アドベンチャーゲーム

本作の制作の始まりは(おそらく)「お手ごろなテキストアドベンチャーゲーム」という意図的に価格を抑えた作り方が前提にあると思われます。

その結果、定価が1,980円となんと2,000円を切っており、この値段で勝負(制作)出来たことこそが作品のプレイユーザーを増やし、口コミによる循環、知名度や評価へと繋がったと言えるのではないでしょうか。

(若干皮肉も交じりますが)スクウェア・エニックスという大手が”あえて”手掛けたからこその完成度の高さ、タイパ、コスパ、圧巻の出来であることは間違いありません。

筆者のプレイ時間は約12時間とこちらも(お値段に見合った/お値段以上の)適度なボリューム。

システムは《コマンド選択》による会話や行動への決定権と、《ポイント&クリック》による画面内の探索でのストーリー進行となっています。

ロードも全く気になりませんでしたが、その要因は他でもないボイスがないことに由来し、低価格での提供はこの点(ボイスなし)が生み出している部分も大きいかと思います(個人的にはこの点は好みかつ二者択一要素なので、評価には影響しなかったです)。

あらすじ

舞台(設定)は、昭和後期の東京都墨田区本所周辺(実在の町)。

巷では空前のオカルトブームが起きており、死人を生き返らせることが出来るという『蘇りの秘術』と、その手法が記された『禄命簿』という古文書が発見され、世間の注目を集めていた。

そんなある夜…突如として墨田区本所に伝わる怪談『本所七不思議』の呪いが復活する。

七不思議の呪いを受けた呪主(かしりぬし)たちは、『蘇りの秘術』を得る(または発動を阻止する)ために、それぞれに与えられた七不思議の呪いがこめられた呪詛玉(じゅそだま)の力を駆使し、自身の目的のためにおのおのが想いのままの行動を取っていく。

『蘇りの秘術』と、意図せず手に入れた(呪いの)能力に翻弄された9人の男女の呪い合い合戦は、1つの真相を知ることとなる…。

全体的な感想

複数の視点から進むエピソード

本作におけるプレイヤーとしての味わいどころは…複数の人物の視点(物語)を跨ぎながら『蘇りの秘術』を求め、滓魂(さいこん)集めに奔走すること。

『本所七不思議』にちなんだそれぞれ異なる能力を秘めた呪詛玉を手にした呪主(かしりぬし)たちの呪い/呪われ、腹の探り合い合戦(心理戦)。

本作は大きく4つ(5つ)のルートが存在し、いずれもバディものとしてそれぞれがそれぞれの目的を探求しながら歩む中で『本所七不思議』を巡る(本作においての)【一つの真相】に向けて、時に交わりながらも、(自然と)集約されていくというもの。

バディについても、年齢/性別/職業様々でどのルートもそれぞれの良さ/特徴を生かしており、甲乙つけがたい出来です。

主要な4つのルートとバディ

メタ的ですが呪主が複数人いることを生かした展開…能力を悪事に使う、欲望に使う、何もしない、阻止にかかるなど、各人の(余計な)動き/思惑によって物語が形成されていること、そのやり取りが作品全体に深みを生み出していることも賞賛したい部分です。

ストーリーチャートによるそれぞれの進行の制御と状況の明確化、ありがちな言葉ながら「点と点が線になる様」を味わうことが出来る演出は物語への求心力を強め、先が気になって進む手を止められなくなるほどでした。

キャラクターの魅力

個人的に嬉しかったのは小林元氏のイラスト(キャラクター)が、実在人物風…筆者の好みドストライクのテイストでお目にかかれたこと。

「キングダムハーツ」や「すばらしきこのせかい」など氏の有名作(キャラクター)は数あれど、今作ほどリアル寄りな絵柄はこれまでにはなかったように思います。

そんなキャラクターは登場する全員が主人公であるほどの印象力で、プレイヤーは全員に感情移入したり、時に傍観者となり眺めまわしたりとある意味大忙しです(笑)

あらすじでは9人と書いていますが、登場する人物で言うと20人近く。そしてその誰もが物語のキーやパズルのピースを持っており、誰一人欠かすことは出来ません。

(ゲーム内の)時代設定を取り込み、息を吹き込まれた人物たちは魅力に溢れており、彼らが紡ぐ群像劇は数多くいる登場人物のいずれにも愛着が湧くクオリティの高さです。

★ニンテンドードリームによる小林元氏のインタビュー記事&キャラクタータッチ案は必見です。

キャラクターの扱いにおいて特に印象に残ったのは小者味を醸し出しながらも、救いようのない残念キャラにわざと置かれたような噛ませ役がいないこと(もちろんクズオブクズ(怒)もいますが、こちらは逆に清々しいほどに捨て極まっています)。

その筆頭ともされそうな呪主(かしりぬし)のひとり、並垣祐太郎も(ですらも)人物資料でだけ明かされる生い立ちに関する些細なエピソードがあったりと、時たま垣間見えるそれぞれの生い立ち/この日に至るまでの背景も踏まえ、作り込まれていることに呻ると同時にキャラクターへの愛が感じられます。

制作側からは意外だったとの声もある世間からの並垣人気はその人間臭さ、不器用さを絶妙に描いた賜物だと言えます。←インタビューを読む限りそこまで考えられていたのかは疑問ですが(笑)

★インタビュー秘話にて裏話も語られています(並垣についても)。

シリアスとコミカルの塩梅、会話のテンポの良さ、変顔も駆使するキャラクターの個性の魅せ方はどれを取ってもセンスが光っていて、(安っぽい言葉で恐縮ですが)とにかくオシャレでした。

謎解き要素は時たまに

推理や謎解きは時々に挟まりそう多くはないのですが、早い段階で本作に隠されたトリック、(ある意味での)オチ、制作側が意図しているそれぞれの役割や立ち位置に気づき、プレイヤーのひらめきと理解が追い付けば、案内人から投げかけられる質問にサクサクと答えることが出来て気持ち良さするらあることでしょう。

逆にこの部分において(物語への理解やトリックの面で)置き去りになっていると感じてしまいかねない気もしましたが、程よく引き戻しにかかる演出や問いかけがあり、ゲームオーバーに対する解決策の提示もほどよく、親切設計であったように思います。

準備された膨大な資料は読む(読み込む)からこそ気づけるような仕掛けもあったり、扱った『本所七不思議』への造詣の深さ(そこまでの調査)、呪いの能力と複数人物の異なる目的(思惑)を融合させた作り込み、なによりゲームの要素に落とし込んだことに脱帽せざるを得ませんでした。

ハードをまるごと生かしたギミックも、搭載されたパノラマ機能の活用も、プレイヤーへの楽しさの提供に事欠かない遊び心がまた、プレイヤーの心を掴んだ点の1つであろうと思います。

時代の生かし方

本作の時代設定は昭和後期(70年代後半から80年代前半あたり)。

筆者はこの時代を生きていないので「そうだったんだろうな」程度の感じ方ではありますが、「レトロ」という吸引力の強い枠組みにピタリとはめこまれたワードや流行りもの、演出までもで醸し出すノスタルジックさは凄まじく、眩しいほど。

イベントや些細な出来事の裏付けも(現代では逆に起こり得なかったり、整合性が取りづらいこと…スマホ/ケータイが浸透していない)当時だからこそ納得できるという、時代背景の生かし方も世界観に引き込まれた理由の1つです。

当時の流行りに言及した顕著なものとしては、《なめねこ》をもじった《なめどり》と呼ばれるキャラクター。

このヤンキーに扮した(グレた)鳥類たちのイラスト(ステッカー)を町の中いたるところで探すことがゲーム内のコレクション要素となっています。名前に始まり、バリエーションの豊富さ、隠れている場所(箇所)、こちらも遊び心に溢れていて、探す楽しさが大いにあります。

今後について…

完成度&満足度が高い1作だったからこそ、《ボイス搭載》、《パッケージ化》、《シリーズ展開》は今後期待したい点です。

特にボイスに関しては主要なキャラクターが多い=声優の知名度(格)で、遊ばずとも真相/犯人がバレるなんていう残念過ぎるリスクが少ないという点でも個人的には検討の余地ありだと思っています。

たとえば昨今取り組まれているクラファンなんかでもいいと思うのですが、巷の評判や各方面でのゲームアワードの受賞を考えればスクエニにはその必要性はない気もしますし…(笑)、余韻を残しまくりのエンディングと、「ナカゴシ案件」としての続編への広がりに期待が止まりません。

ちなみに…筆者が本作にどのくらいハマったかといえば…まず後に現地への聖地巡礼を敢行したほど実際の地や怪談を生かした世界観が好きでした。そして(シンプリストもどきですが)グッズも少し手に入れちゃいました(黒鈴ミヲTとなめどりステッカー…出たのはポポ十郎でした!)。

★聖地巡礼記事(PART1)

★聖地巡礼記事(PART2)

ラストについて…(ちょっとだけネタバレあり)

個人的にはラスト”だけ”は手放しには絶賛しづらく、そのトリック/手段を取ったことでこれまでを《なきもの》として飲み込む展開はちょっとモヤっと、腑に落ちなかった側です。

ただあくまでも”オチ”の部分だけであって、それ以外…そこまでの展開(特に中盤)は文句のつけようがなく、大いに楽しませてもらったことを考えれば、個人的に結局は大絶賛という評価に落ち着きます(物語全体を見た時の評価の付け方は人それぞれなので異論があるのは承知の上です)。

作品としては複数のエンディングが準備されており、それらがバッドエンドの扱いになってはいるものの、可能性の示唆や余韻を残すことで、プレイヤーが納得のいく終わり(自身の都合の良い未来)を想像して受け入れるのもありだと思えました(興家の最後の言葉が印象的でした)。

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