久しぶりにノベルゲームが遊びたくなり以前から気になっていた、「レイジングループ」を手に取りました。
評価に違わぬ面白さを紹介したく、クリア後の感想レビュー記事を書いていきます。
「レイジングループ」とは…?
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「レイジングループ」は、2017年に「KEMCO」より発売されたホラーサスペンスノベルアドベンチャーゲーム。
元々は2015年にスマートフォン用ゲーム(アプリ)として配信されたのがはじまりで、2017年(以降)は家庭用ゲーム機などに大幅強化(テキスト追加、イラスト追加、フルボイス化)して移植されています。
CEROは17歳以上対象の[D]。これは題材相応のグロさゆえですが、残酷描写は設定でON/OFFが可能。
2023年現在ではSwitch、PS4、Vita、Steamなど遊べるプラットフォームは数多くあり、パッケージ版はPS4のみあります(他はダウンロード配信)。
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今回はPS4のパッケージ版を購入して遊びました!(封入特典のステッカーと店舗特典のポストカード)
Switchの体験版ではメインルート(1ルート分)をがっつり遊ぶことが出来ます。興味がある方は、まずは体験版から触れてみてもいいかと思います。
★Switch-ダウンロード版(体験版あり)
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★Steam-ダウンロード版(体験版なし)
あらすじ
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限界集落・藤良村に残る、《夕霧》から始まる妖しげな因習と「おおかみ」信仰。
それは「人狼(汝は人狼なりや?)」を模した「黄泉忌みの宴」と呼ばれる儀式。
役割(陣営)を課された村人たちは、潜むおおかみ探しが使命となり、逆におおかみは村人に化け毎夜1人ずつあやめていく…。
そんな呪われた村に迷い込んだ、房石陽明(主人公/ふさいしはるあき)。
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時は5月11日の真夜中。
旅行中に迷い込んだ集落でバイクが故障し途方に暮れていた彼の前に現れたのは、集落の出身者(帰省中)だという芹沢千枝実(せりざわちえみ)。
彼女に助けられた房石は翌日になって、この休水(やすみず)という集落の怪しげな雰囲気を感じ取る。
急ぎバイクを修理し、帰路に付こうとした房石の前に現れたのは《夕霧》…。
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村から出られなくなった彼は「宴」に巻き込まれ、その中で自身の「死に戻り(ループ)」を知る。
房石はこの能力を生かし、繰り返される5月11日と惨劇を潜り抜け、怪奇事件の謎を解き明かしていく。
あれこれ感想
圧倒的ボリューム
まず個人的に印象に残った本作の特徴は、ノベルとしての圧倒的ボリューム。
公式より100万字を超えるとされているテキスト量、腰を据えてじっくりと堪能する大長編となっています(クリアまで読み進めるだけでおよそ40時間)。
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さらにそこに加えたいのが、(ゲームとは言え)《ほぼ読み物》であるという点。
ジャンルがアドベンチャーで、「人狼(パーティーゲーム)」がベースにあるという、おおかみ(鬼)探しの推理、騙し合いによる駆け引きなど、プレイヤー主体の選択がありそうなイメージに反して、(ゲーム全体のボリュームから見ても)その配分/選択肢の発生頻度はかなり低いです。
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そんな時たま登場する選択肢も、基本的には(生死に関わる)重要度の高い場面のみで、その性質上2択が多いかつ本編に影響(分岐や攻略)を与えることは在りません。というのも選択後即座に正解(続行)/不正解(バットエンド)が分かり、正解以外での進行はない(巻き戻るだけ)=本作には決められた進行経路しかないためです。
他にも、進行を意図的にふさぐ箇所もあり、これはバットエンドでのみ手に入る「KEY」の取得によって切り開いていく選択肢です。
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この一本道進行やゲーム性の低さについては好みが分かれるかと思いますが、本作が多数の高い評価を得ているのは、他でもないそれらを差し置いた、シンプルに読み物としての完成度の高さであり、(偉そうですが)実に良く出来ているのです。
特に本作の持つ「限界集落に残された因習」「人狼(ゲームシステム)」「外部の人間の介入」「死に戻り(ループ)」といった要素が上手く融合し、余すことなく(最大限)生かされており、圧巻の出来栄えです。
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個人的には(本作に限らずですが)制作側が意図したルート、正しい流れ、最善の楽しみ方をしたいタイプなので、質の高い物語に集中(没頭)出来て非常に良い構成であったと思いました。
誰もが読むこと、読み続けることさえできればクリアまで到達可能で、それを容易にした作品です。
ゲームシステム
前述したとおり圧倒的テキスト量と混乱しやすそうなループ要素(過去の出来事の引用)に対して、細分化されたチャプターをいつでもどこでもやり直せる/読み直せる仕様となっています。
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バッドエンドの解消方法や、ループによって取得した「KEY(選択肢の解除鍵)」の使い道(次はどこに行くかのチャプター指定)など、そもそも悩むほどの場面はありませんが、それでもヒント(というか答え)を与えてもらえます。
ちなみに…
何かとインディー感も注目されている本作ですが、絵は個性はあれど2極化するほどの色味はない印象で、テイストはあくまでも好みの領域レベルです。
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背景バリエーションの少なさは確かに少し気になりますが、それ相応の値段であると理解できますし、レビューで見かける声優の(学生を使っているという)主にネガティブ系の感想も、個人的には良くも?悪くも?気になるほどの何かを感じることはなかったです(みなさん耳が肥えてらっしゃる!)。
ベースは「人狼(汝は人狼なりや?)」
本作のメインインパクトは村の因習として残る「黄泉忌みの宴」と呼ばれる儀式。
これは昨今人気のパーティゲーム「人狼(汝は人狼なりや?)」のルールをベースとし、現実に落とし込んだ際の人命がかかった緊張感のあるやり取りを描いています。
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この「宴」内の解釈(役職などの個別ルール)については全面的に説明が入り、本編の進行と共に理解が出来るため、筆者同様に「「人狼」自体を知らない」という方でもなんら問題ありませんし、ルールも難解な点はありません。
そしてパーティゲーム(娯楽)だからこそ成り立つ世界観が、現実(想定)で行われるという点において普通に考えれば「大多数の人間(ほぼ身内のような関係性の集まり)が同意のうえで人を殺める行為を開催する」ことに思考が追い付かず、プレイヤーとしては「ありえない(話)」がどうしても拭えないと思います。
しかしこの大前提に対して、”それ相応”の理由や会話が(ちゃんと)準備されており、「仕方ない(参加するしかない)」が主体になるとはいえ、作中の参加者はもちろんのこと、プレイヤー自身も納得のいく形、当事者視点(疑似体験)で「宴」が始まる(おいてきぼりにされない)というのがまず初めに筆者が唸った点です。
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これにより生み出される、(厳密にはゲーム世界でありフィクションですが)パーティゲームだからこその表面的な生死の概念を現実世界で再現した際の(文字による)強度やグロさ、議論のえもいえぬリアリティは中々のもの。
ただし対人の心理戦の駆け引きや、じわじわ追い詰められる迫りくる恐怖であり、インパクトありきの驚かせに走ったもの(ホラー)はないのでご安心ください。
死に戻り(ループ)
次に紹介しておきたいのが、主人公の房石陽明が持つ能力?ともいうべき「死に戻り」…すなわちループについて。
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彼が何らかの理由(不問)で命を落とす度に、5月11日の真夜中…道に迷って村に入る直前まで巻き戻ります。
これは逆に言うと「黄泉忌みの宴」を攻略し無事に完遂することが大前提(じゃないと村から出ることが出来ず一生ループ)とも言えます。
ここで引っかかってくるのが、房石陽明が村の住人ではなくただ偶然に「宴」に巻き込まれてしまったということ。誰もが想像しうる通りですが、「人狼」において最初の1人(生贄)として選びやすい筆頭であり、彼はそれも考慮の上で「宴」を立ち回っていかなければいけません。
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そこにフォーカスして観るとなおのこと、彼自身の場回しや騙し合いにおける能力値、かわしのうまさ、知性をキャラクターの個性として味わうことができます。なにより発想、転換として日常的にあり得る点も含め、説明込みで納得出来たことで作品に引き込まれました。
「死に戻り(ループ)」の意義
そんな「死に戻り(ループ)」の意義、扱い方が本作で個人的に一番印象に残った部分。
特に「死に戻り(ループ)」を重ねることの重要性、蓄積されていく味わった「経験」、得た「知識」を総動員し、その時のベストな選択として道を切り開いていく流れは、後に続く出来事(新たな展開)への整合性も取れて心地いいほど。
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前回以前の(ループの)失敗に対する攻略法を導いていくトライ&エラーの様相まで物語に取り込んだスタイルで、順を追って(少しづつ)前進している感覚をプレイヤーが誰よりも味わうことが出来るのです。
1周目の(ループを知らないからこその)緊張感、2周目の半信半疑の探り、3周目(以降)の開き直り、ループを認識したうえでの主人公の思考や行動は、「また次があるし」と後半に近づくほどにこちらも割り切れるようになっていて楽しみ方のバリエーションの提示として面白さに還元出来ていたと思います。
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主人公の房石の行動が(ナチュラル)サイコパスだと思う面は数あれど、彼の他人ポジションの使い分けによって、情に流されず(過ぎず)、時にぶった切った行動を取ってくれたことで、重すぎず、ダレず、ストレスなく読み進められた部分も多かったと感じています。
「黄泉忌みの宴」の攻略方法
そして、「死に戻り(ループ)」が最大に生かされているのが、他でもない「黄泉忌みの宴」の攻略。
15人そこらの村の住人の中には部外者である主人公に閉鎖的な者も少なくはなく、序盤は数多くの人物たちの人となり(バックボーン)を知り得る状況が全くないところから始まります。
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そんな情報不足の始まりから、主人公が「宴」を攻略していく過程の「自分でなんとかしなければいけない」の思考はプレイヤーと同じ温度感、想像しうる一般的な発想で、進行速度も絶妙。
「宴」における数々の議論とやり取りの中で、一筋縄ではいかない部分、個人の言い分、収拾、落とし所を俯瞰しているプレイヤー側が納得できるところまで持ってくる、そしてだらだら長くなっていないという絶妙なまとまりです。
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ループの度に「宴」の中での参加者全員の配役が変わり、それによって主人公の立ち廻りや、キャラクター(村人)の見え方が変わるのも良かった点。
配役次第で敵にも味方にもなり得るからこそ、個人のあらゆる側面を「見る」「知る」「観察する」という視点が生かされており、ループに持ち越した情報(過去の配役で見せた姿)を駆使した、属性判断や言動読みを活用した「宴」攻略とその裏付けは唸るほどです。
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この圧倒的ボリュームと完成度の高さ、ノベルゲームがお好きな方に是非一度触れてみて欲しい作品です!
©2015-2017 KEMCO
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