今回紹介するのはSteamを徘徊中に見つけたインドネシア発のアドベンチャーゲーム「A Space for the Unbound 心に咲く花」です。
製品版のリリースが待ち遠しくなる《掴みの素晴らしさ》に今回紹介記事を書くことにしました。
「A Space for the Unbound 心に咲く花」とは…?
「A Space for the Unbound 心に咲く花」は、インドネシアの「Toge Productions」より発売予定のアドベンチャーゲームです。
リリース日は未定(2022年発売予定)ながらも現在はSteamにてDemo(体験版)が配信中で、序章と1章の約1時間がプレイ可能です。
日本語サイトも用意されており、予定ではあるもののSteam以外にNS、PS4、Xboxかつパッケージ版も発売予定と大きな規模となっています(2022年に公開された情報ではPS5も追加されています)。
不安要素としては2020年の時点で”今冬発売”とサイトが準備された状態のままのため、信ぴょう性には欠けてしまうというか…。一番初めのトレーラーに至っては2015年の時点で公開されており、すなわち発表から少なくとも6年は経っているということになります。(※発売日が2023年1月に決定しました!)
★その後の製品版をプレイ&クリアしたので感想を書きました(↓)
概要
『高校生活の終わりと共に、ぼくらの世界も終わるんだ』
舞台は1990年代後半のインドネシアの田舎町。
高校生のアトマ(主人公♂)と彼女のラヤ(主人公♀)の日常を舞台とした等身大でどこか懐かしさを感じることが出来る世界の中で、物語は”終末世界”(の可能性)と、”超常能力”を描いた(匂わせた)ものとなっており、時空超越系の色が濃いです(※あらすじと体験版のプレイでの感想です)。
現時点(序章と1章)ではストーリー部分/詳細を読み取ることは難しいものの、作品そのものが醸し出す雰囲気と耳になじむやさしいメロディー、登場人物たちの見た目や住んでいる町並みが、(インドネシアがアジア圏ということもあって)遠からず日本的でもあり親近感が沸くものでした。
特に作品紹介にてキーワードとしても出ている、日本の映画/新海誠監督の作品に影響を受けている印象は強く、監督の代表作ともいうべき「君の名は。」を彷彿とさせる終末世界風味がふんだんに感じられます。
作品全体から感じられる雰囲気は監督作品が好きな人にもおすすめしたいほどです。
トレーラーが発表されたのは2015年(「君の名は。」の公開は2016年)と本作の方が早出ですが、上記の場面なんかは既視感すら抱くほど。
個人的には(ストーリーではなく風味として)「秒速5センチメートル」の「コスモナウト」を感じたりしつつ、「星を追う子ども」の序盤のような”日常の中から生まれる異変”が上手く表現されている印象を受けました。
美しいピクセルアート
本作の魅力、第一印象はなんといっても、ピクセルアートの美しさにあるでしょう。
本作の開発元である「Mojiken Studio」と「Toge Productions」がタッグを組んだピクセルアート作品に「Coffee Talk(コーヒートーク)」があり、そちらを遊んだという方はそれだけでも本作に興味が沸くのではないでしょうか?
ゲームの表現において”美しさ”で括る、どんなものが美しいかというのは個人差(好み)もあり評価が難しいところではありますが、ピクセルアート好きにはたまらない、寄りも引きも表情の変化を読み取れるなど非常に繊細で丁寧な作りを感じられます。
体験版感想
核となる要素
物語の核(中心)は「スペースダイヴ」というアトマの能力にあり、「赤い本」と呼ばれるアイテムを使って他人の精神世界に潜りこみ、不安や悩みごとを取り除いてあげたり、思考をコントロールすることが重要になっています。
「スペースダイヴ」は悪いことに使うわけではなく、(物語を進行させる目的のために)対象のネガティブ要素を解消してあげることで(結果として)都合よく他人を動かすというゲーム性の要素となっており、作品が持つ優しい世界と共にうまく生かされた能力と言えます。
この潜り込んだ「他人の精神世界」での行動、心の解放には”キーアイテム”が必要となっていますが、それらは横スクロールの移動における町の散策、住人たちとの会話やイベントで手に入るようになっており、ストーリー進行と自然に融合しています。
精神世界の中で「何(どのアイテム)を使用するか?」というアドベンチャーゲームのシステムを含めての流れるような展開が印象的で、特に(進行/攻略に)必要となるアイテムは生活レベルのシンプルでどこにでもあるもののことから、「スペースダイヴ」という能力の重要性が強調された上手い作りでもあると思いました。
ゲーム性としては他にも「(先生の)目を盗んで逃げる」「タイミングよくボタンを押す」などのアクセントとして随所に登場しますが、これらもストーリーに絡んだイベントとして溶け込んでいます。
ローカライズにも期待
本作は日本語にも対応しており、ローカライズについても違和感がないどころか、「良いなぁ…」と思える表現が多々。
些細な点に思えますが、ローカライズ後もフォントが統一されているのは世界観から浮かない、プレイ中にモヤっとしない観点から個人的には高評価ポイントです(筆者はここ結構気にします)。
あとは一般的に海外ゲームの日本語化で興ざめする、直接的な翻訳過ぎて意味が分からなくなっている文書というのが本作にはなく、アトマとラヤが「卒業までに叶えること」として作ったリストなんかは翻訳が手抜きだと一番ボロが出る、最悪の場合意味不明になるところが、言語力によって踏み外すことなく融合出来ています。
おわりに
たった1時間の体験が本作の期待値を大幅に上げており、リリース(新たな情報提供)が待ち遠しい1作となりました。少しでも興味が沸いた方は連休中のお供にでも、この不思議な世界に触れてみてはいかがでしょうか。
© 2022 Mojiken Studio and Toge Production.