【感想&レビュー】「クロス探偵物語」~ポップでコミカルなノリに心が鷲掴まれる探偵業~(ネタバレなし)

【感想&レビュー】「クロス探偵物語」~ポップでコミカルなノリに心が鷲掴まれる探偵業~(ネタバレなし)

遅ればせながら、2021年に購入した「クロス探偵物語」をこの度クリアしました!

自力での攻略は中々の労力を要するものではありましたが、前評判通りの面白さに大満足の後味となった懐かしの1作を紹介します。

以下、本作のPS版のスクリーンショットを掲載しています。ストーリーにおける核心的なネタバレを行っていませんが、作品の性質上スクリーンショットで読み取れる情報も多いかと思います。未プレイの方は閲覧の判断には十分ご注意ください。

目次

「クロス探偵物語」とは…?

「クロス探偵物語」は、「クロス探偵物語 ~もつれた7つのラビリンス~」のタイトルで1998年にセガサターン用の推理アドベンチャーゲームとして「ワークジャム(のちに倒産)」から発売された1作。18歳の駆け出し探偵・黒須剣が、依頼人からの難題を解决していくドラマ仕立ての作品です。

1999年にプレイステーションに移植され、その際に「クロス探偵物語」に改題。さらに2000年には前後編の廉価版も登場しています。

2023年現在遊べる機種は、セガサターン版とプレイステーション版の2種類のみ。どちらもアーカイブス化(配信)はされていないためディスクと実機でのプレイになります。

さらに制作会社のワークジャムが倒産していることから、現在は(アークシステムワークスが版権を取得しているものと思われますが)、続編はもとより移植すらも難しい状況です。いずれソフト(ディスク)がプレミア化してしまう可能性もあると言えます。

ちなみに、後発のプレイステーション版への移植の際に大幅な改良が入っており(遊びやすさ、グラフィック追加、ボイス追加など)、今日ではプレイステーション版の方が「完全版」と呼ばれるに至っており、今回はこちらを遊びました。

あらすじ

物語の始まりは主人公である、黒須剣(くろすけん)が高校を卒業し、父親の墓前で探偵になることを宣言するところ。

母は剣を生んですぐに亡くなり、刑事であった父は謎の死を遂げ、天涯孤独の身。

剣は正義を守る父の意思を継いで探偵になることを決意。

そして名探偵と名高い冴木達彦(さえきたつひこ)への弟子入りを目指し、彼の事務所である「冴木探偵事務所」を訪れることに。

不在の冴木に変わり応対した事務員である西山友子(にしやまともこ)にあしらわれながらも、ちょうど訪問してきた依頼人への対応を(勝手に)引き受けた剣は、依頼の解決を条件に自身の雇用を友子に約束させることで、探偵としての1歩を歩み始める。

持ち前のコミュ力と、推理力を駆使し、難題を解決し続ける順風満帆な日々を送る剣であったが、それは父が亡くなった謎(秘密)に隠された組織の陰謀にに近づくことでもあった…。

「クロス探偵物語」の感想

本作は、企画・脚本・監督をワークジャムの設立者でもある神長豊氏、キャラクターデザインとグラフィック監修を玉置一平氏が務め、ピチカート・ファイヴの「大都会交響楽」が主題歌という豪華な意欲作となっています。

1話ごとにドラマ(風)仕立てで進行していく物語は、密室トリック、(女)学園もの、連続殺人…さらにはノベル、3Dダンジョン脱出など、ボリューム満点なテイストの異なる7話となっており、時に笑いあり、涙あり、感動すらできるほどの内容です。

ゲームシステムは、黒須剣(探偵)の視点でトラブルに挑むスタイルで、オーソドックスな《ポイント&クリック》と《コマンド選択》で、聞き込み、証拠探し、状況整理と手を動かして推理(フラグ管理)を発揮していく必要があります。

そして、このプレイヤー主体の流れの無駄のなさ、過程の描写が丁寧であることから、置いてきぼりにされることがありませんし、なによりも「自分(自力)で推理している!」という養分を存分に摂取することが出来るのです。

ただしトリック(ひっかけ)は上手く出来ていると思わされる本格派である反面、ヒントらしさが乏しく導線的な印象が薄目。すなわち(基本は)プレイヤー自体のひらめきが重要というかそれ頼みな印象です。

特にトリックや犯人を直接文字入力する場面においてのお助け的要素がなく、その結果…沼る可能性も高めです(詰まったら先人の力を借りましょう)。

そしてどっしり構えて遊び尽くせるボリューム(プレイ時間の目安は約30時間)に、アニメ調のアクセントのある動き、主要キャラクターにボイスも完備された中で、独自の名称「マッハシーク」と呼ばれる高速データ読込技術(先読み)が圧巻で、ゲーム進行中に重くなる、止まる(もっさり)ということが全くありません。

ボイスを飛ばし目で急ぎ足の進行にしたとしても影響がなく、この読み込みにおけるストレスのなさは非常に評価できる点です。

さらに本作の一番の特徴であり、人気の所以は…ドラマ的な構成と魅せ方によって、ミステリーとはいえ絶妙に軽妙なコミカルさと会話の掛け合いによるテンポが最高にハマっているところでしょう。遊びやすさとスタイリッシュさを兼ね備えており、オシャレに仕上がっています。

特に警察(刑事)ではなく探偵が取り扱い、解決を目指すという視点での様々な事象…トラブル程度のことから、(グロ目の)本格的な事件や描写が共存しており、この緩急のあるメリハリ抜群の構成も魅力の1つです。

剣と友子(おそらくヒロイン)、そのほか魅力的なキャラクターたちとのやり取りに凝縮されたエンタメ性は作品の象徴とも言え、月日の経過、関係性の構築を感じさせる会話によるイベントの積み重ねは個人的に好きなポイント。

キャラクター(特に友子)の服装が毎度違うのも細かなところに気配りやこだわりを感じられました。

どこを取っても名作の評判に恥じぬ、実にクオリティの高い作品でした!出会えて良かったです!

最後に…本作を語る上で外せないのは、続編が制作されなかったということでしょう。

これは本編内においての影響もあり、続編が計画されていたであろう本作中では随所に「続編ありき」の伏線や匂わせが多く描かれ、序盤に提示されている剣の父の死の謎(真相)に対する回答は明かされぬまま終わってしまいます。

他にも終盤になってから(続編で生かす予定だった?)インパクトの強いキャラクターが登場したり、最終話に(ヒロインであるはずの)友子が全く絡まないなど、続編が登場しなかったゆえに随所に勿体ない…を感じてしまう状況です。

本来構想があったはずの続編は2008年に正式に制作の中止が発表されており、今となっては未完の名作と呼ばれることになってしまったわけです。

それでも巷で語り継がれる人気の高さは、どこかに届いてほしいと祈るばかり…。

©Work Jam 1999

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