映画「閃光のハサウェイ」の鑑賞後感想を、今回鑑賞したDolby Cinema(ドルビーシネマ)の感想と合わせて書き残しておきます。
映画「閃光のハサウェイ」とは…?
映画「閃光のハサウェイ」の原作は1989年にガンダムの生みの親、富野由悠季氏によって書かれた小説(3部作)で、小説をご存知の方はおよそ30年越しの映像化(映画化)です(筆者は映画鑑賞後に原作を読みました)。
物語の舞台は1988年に公開された映画「逆襲のシャア」から12年の歳月を経た宇宙世紀0105年、「逆襲のシャア」での出来事を踏襲した、25歳になったハサウェイ・ノア(マフティー・ナビーユ・エリン)の物語で、本作は小説3部作でいうところの1作目になります(=つづきます)。
ここでこれ以上こまごました物語内の関係性を語る必要はないと思うので、「閃光のハサウェイ」&「逆襲のシャア」の場面を味わいながらのカッコ良すぎる主題歌(Alexandros「閃光」English.ver)を貼っておきます。
ガンダム初心者のガンダムに対する印象/魅力
【Q&A】記事でも書いたのですが、映画館に「閃光のハサウェイ」を見に行くことにするまでガンダム未経験者だった筆者は、予習に映画「逆襲のシャア」から入り、続けてアニメ「機動戦士ガンダム」(全43話)を見ました。
★ガンダム初心者の方向けの「閃光のハサウェイ」基本の【Q&A】はこちら(↓)
映画「逆襲のシャア」を見た際、アムロとシャアが劇中度々語り、存在の大きさを匂わせる女性(ララァ)が当たり前とはいえ筆者には何のことやら分からず、二人の会話の本質が全て理解できているとはいえないな。理解したいな。と気になってしまい(ニュータイプってなに?とかね)、アニメ「機動戦士ガンダム」を見たという流れです。
アニメを鑑賞したことで上記の「逆襲のシャア」で抱いた疑問は解消されたのと、なによりガンダム初心者の筆者は、ガンダムの持つ魅力をアニメを見ることによってきちんと学べた、感じる入口に立つことが出来た気がしました。
少ないながらもガンダムに触れてみて感じたのは、ガンダムは筆者が思っていたよりも大人向けのアニメ(物語)だということ。
個人の思想や信念の先にあるものを見ている、それを描いている、伝えようとしているという一筋縄ではいかない社会の仕組みの複雑さや人間模様が絡み合う深い側面がある印象を抱きました。
なんというか…ガンダムに対してもっと子供向けの表面的な戦闘中心のイメージを勝手に持っていたので、「アムロ・レイが主人公なのになんでシャア・アズナブルって世間的に人気があるんだろう?敵じゃないの?」と漠然と思っていたことが、アニメを見たことで理解することが出来ました。敵味方の簡単な物語じゃないんだなぁ~これが(何様)。
もっとも、子供のころにアニメを見ていたらきっとメカニックなドンパチや戦いがシンプルにカッコイイ!と思っていたでしょうし、その子供が見て楽しめる丁寧なセルアニメーション、映像迫力とともに、架空世界の設定を最大限に生かした物語の深み、個人の考え方、そして受け取り方の妙こそが、大人も子供も虜にする作品の魅力なんだなと思えました。
「機動戦士ガンダム」の内容自体は「閃光のハサウェイ」に直接的に繋がるような重要度の高い要素があるわけではないとは思いますが、ガンダム初心者には絶対に味わって欲しい作品だと思いました。
「閃光のハサウェイ」の感想
上記の予習にて、ハサウェイのバックボーン(家族、「逆襲のシャア」での出来事、クェスの存在の大きさ)を認識したうえで「閃光のハサウェイ」を鑑賞してきました。
あわせてガンダムの持つ「それぞれ正義の形」が物語の中心にあるという点にも着目して楽しむことが出来ました。
ギギの存在
本作のヒロイン、ギギ・アンダルシア。
メタ的に言ってしまえば物語をかき乱し、面白くさせるための要因ともいえるギギの存在。
ただそれだけで片付けてしまえないほどに、彼女の存在がハサウェイの深層心理に根付くクェスを彷彿とさせ彼の感情を刺激し、揺さぶるという立ち位置が非常にうまく描かれていたように思います。
見た目は全く違えどもギギの言動、行動の数々が彼女が意図していない感情的なところも含め猶更のことクェスを思い出させるものであり、ハサウェイにとどまらず画面越しのこちら側にも訴え、伝わってくるものがありました。
逆の発想で言えば、ハサウェイにとってクェスの存在がどれだけ大きなものであるかをギギとの関りを通して改めて印象付けるものでもあり、ギギに惑わされる、無意識に惹きつけられるハサウェイに同情せざるをえない気持ちなど、過去作とのリンクを楽しむことも出来ました。
ただ単純に「ハサウェイは女に弱い」という解釈でも、ギギを見たら納得するものもありますが…(笑)それ以上に、彼女の悪意なき言動と駆け引きの妙に良い意味で心がザワザワしました。
細微な面、表情や吐息から読み取る
本編中の数々の場面において、それぞれの心情は言葉で表されることは少なく、実際のところ何を思っているのかはわかりません。
だからこそ印象的だったのは顔のパーツの微細な動き、吐息など、細かな部分における丁寧な描写。それらによって動揺を感じ取ることが出来たり、何かしらの反応が窺い知れる繊細な表現が、多くを語らない登場人物たちを”画”から読み取るという面白さがありました。
ガンダムといえばロボット(メカニックな)アニメ、迫力の戦闘シーンはいつ何時、どの時代にも圧巻に感じるのでしょうが、今作の人間味の描き、絶妙ともいうべき表現もまた現代のアニメの技術の最先端を感じるものでした。この最先端という観点でも映画を劇場で見る価値が大いにあると思います。
マフティーは悪なのか、正義なのか。
何より一番語りたかったことは…ハサウェイ(マフティー)のやっていることは、果たして正義なのか?ということ。
逆に言えば、はたから見たらテロ(無差別)行動というと聞こえは悪いものの、詳しく知っていくと彼が絶対的な悪かというとそういうことでもないんですよね。
ハサウェイを中心に描かれている視点ややり方、苦悩など極悪非道という焦点ではないのもそうですが、彼が本編中で行動を起こしている理由は(分かりづらいですが)語られていますし、理解を示すことも出来はします。
そして、ギギの言う「やり方がよくない」ということは十分理解出来ていても「なら教えてくれよ」と乞うハサウェイの気持ちも、理想論を語られ究極論を唱えられたところで現状では彼のやり方しか方法がないということが痛いほどわかるのです。
社会の現在の在り方と、そこで巻き起こってしまう矛盾や反発に対して問題提起をしているものの、それらに対する正解や不正解はなく、もっとも作中で求めるものでもなく、結果として”答え”は存在しないことになります。これは初代「機動戦士ガンダム」のころから描かれている人間のエゴだったり、割り切れない善悪などガンダムのもつ世界観の真髄でもあると思います。
物語(娯楽作品)として、変えられない結末(決められた結末)は存在していても、その過程は誰かの意見にまとめられたり結論付けられるものではないと本作の時点で既に感じ取ることが出来ました。マフティ―の思想、連邦軍の立場、(タクシーの運転手が語っていた)一般人の声、どれもが興味深く、それぞれに描かれ交わるからこそ、さまざまな感情を抱きました。
それぞれの立場
ハサウェイが本作の物語の主人公なので、筆者は(大多数の人は)無意識下で彼が正義、彼を中心として物語を見てしまっていたように思いますが、かと言ってマフティ―の活動、彼の理念のすべてに賛同出来るわけではないというのもまた本作の描き方に惹き込まれた要因の一つです。
作中では(表面上の)正義も悪も描かれていますが、その正義と悪の切り分けは誰の立場で物語を追うか、個人の持つ感情も含んでの判断、要するに誰の言い分や価値観に見ている側が同意出来るか、するかということでもある気がします。
たとえばハサウェイ寄りに物語を解釈したからと言って、連邦軍のすべて、連邦軍の大佐であるケネスがやっていることは悪なのか?、パイロットのレーンは倒さなければいけない敵なのか?という悩みは抱きますし、単純な割り切りは決して出来ません。
それぞれに抱える苦悩も描かれており、誰の立場も理解できるという悩ましくも自然にフラットな視点で物語を味わうように出来ているというのもまた本作の面白い点だと思いました。
次作に期待
本作は(おそらく)3部作の1作目であり、必然的に導入、概要といった印象でもありました。
表面的な部分が多く、特にハサウェイ(マフティー)についてのあれこれ(ここにたどり着くまで)はまだまだこれから、彼の経緯や言葉がもう少し語られていかないと、今やっていることの真の願いが分からない、理解してあげることが出来づらいんじゃないかな?というところはありました。
戦闘シーン
本編が95分という短さもありますが、戦闘シーンは少なめ、個人的には描写時間という点であっさりかなという気がしました。とはいえ物足りないという類のものではなく、原作ありきですし、物語は綺麗にまとまっていたので原作に忠実だったんだなと(付け足してはいないんだなと)思いました。
短いながらも、序盤の市街地戦の迫力が凄まじく、これまでに見た作品で描かれていた世界の中心である宇宙空間ではなく、地球、人々の住む街の中で戦闘が繰り広げられるという、日常空間に迫りくる兵器の脅威、映像技術や描写が相まって何も成すすべがない恐怖を味わいました。
Dolby Cinema(ドルビーシネマ)での鑑賞を全力でオススメしたい!
今回、音響迫力を楽しむために「Dolby Cinema(ドルビーシネマ)」で鑑賞してきました。
「Dolby Cinema(ドルビーシネマ)」とは何ぞや?というのは公式サイトで確認していただくのが早いのですが、ここで乱暴に片付けると、作品世界に没入する「大音量」、みぞおちに響く「重低音」によって奥行きのある空間で映画を楽しむことが出来るというもの。
他にも言葉では説明が難しい色彩技術など…。
+500円とアトラクション価格ですが、映画館でプラス料金で楽しむ中では個人的に満足度が一番高いと思っています。
筆者が3Dや4DXが苦手なこともあって…特に4DXのいつ来るか分からない揺れとか、噴射とかはびくびくして物語に集中できないし、その要素が楽しいとは思えないんですよね…。同じようにそういうのは苦手だけど、落ち着いて少し贅沢に映画を味わいたいって思う人におすすめなのが、「Dolby Cinema(ドルビーシネマ)」や同等の「IMAX(アイマックス)」といった音響推しのプラス料金で味わう至福時間です。
音響効果でアクション系のドンパチは迫力が増し増しになり、ミュージカルなど音楽系作品はノリにノレるでしょう。
個人的な体感ですが、「Dolby Cinema(ドルビーシネマ)」は”音量”に力が入っている印象で、低音(重低音)が特にインパクトがあります(「IMAX(アイマックス)」は”繊細”な音に強い印象)。
お近くに対象の劇場がある方は、「閃光のハサウェイ」に限らずラインナップ上、性能を存分に味わえる作品が対象となっているため、是非一度楽しんでみてください!虜になりますよ!
★その後、ガンダムスクエア(カフェ)で「閃光のハサウェイ」コラボメニューを楽しんで来ました!