【感想&レビュー】「クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~」をあえて「ぼくなつ」と比較しながら語っていく~(※ネタバレ注意)

【感想&レビュー】「クレヨンしんちゃん「オラと博士の夏休み」~おわらない七日間の旅~」をあえて「ぼくなつ」と比較しながら語っていく~(※ネタバレ注意)

「オラ夏」こと「クレヨンしんちゃん 「オラと博士の夏休み」〜おわらない七日間の旅〜」をクリアしたので、感想&レビューを書いていきます(以下、「オラ夏」と表記します)。

今回は「クレヨンしんちゃん 「オラと博士の夏休み」〜おわらない七日間の旅〜」や「ぼくのなつやすみ」シリーズのネタバレを含んだ感想になります。
そして両作品を対比(比較)するような内容となっているため(優劣ではありません)、その観点がお好みではない方は閲覧にご注意ください。

目次

「クレヨンしんちゃん 「オラと博士の夏休み」〜おわらない七日間の旅〜」とは…?

2021年7月15日にネオスより発売されたNintendo Switchソフトのアドベンチャーゲーム、「クレヨンしんちゃん 「オラと博士の夏休み」〜おわらない七日間の旅〜」

制作はミレニアムキッチン。CEROは全年齢対象の[A]。

本作の発売情報が公開された際にミレニアムキッチンの代表作(シリーズ)である「ぼくのなつやすみ」を彷彿とさせるタイトルやPVから『「ぼくのなつやすみ」の続編か?スピンオフか?』という声が多く見受けられたように記憶しています。

事実として「ぼくのなつやすみ」シリーズ(以下:「ぼくなつ」)は、2009年にPSPで発売されたシリーズ4作目の「ぼくのなつやすみ4 瀬戸内少年探偵団「ボクと秘密の地図」」を最後にアプリ版の新作情報は数年前からあるものの、今日まで最新作は発売されていません(移植は2010年が最後)。

©Sony Computer Entertainment Inc.

実に10年以上最新作がないともなれば、絶大な人気を誇る「ぼくなつ」シリーズのファンが「ぼくなつ」っぽさを求め期待をしてしまうのも致し方ないというか…。

筆者も「ぼくなつ」シリーズが好きなので気持ちは分かりますし、その部分(「ぼくなつ」要素)に大きな期待を寄せていました。

「オラ夏」と「ぼくなつ」

今作「オラ夏」をクリアしての感想をどういう形で書こうかと悩んだのですが、「ぼくなつ」経験者として「ぼくなつ」シリーズと「オラ夏」を比較しながら(ポイントをあげながら)やっていきたいと思います。

「ぼくなつ」経験者には「オラ夏」を遊ぶ(自分に合うか)検討材料にしていただき、「ぼくなつ」未経験者には「オラ夏」きっかけででも、神ゲーである「ぼくなつ」シリーズ作品を知っていただければ嬉しいです!

【大前提】「オラ夏」と「ぼくなつ」の要素的関係性(関連性)

ここでまず本末転倒な重要なポイントなのですが、本作「オラ夏」のプロデューサーであり「ぼくなつ」シリーズの生みの親、綾部和氏のインタビューにて「「オラ夏」は「ぼくなつ」ではない。/似ないように作っている。」との発言があります。

あわせて、「同一人物が作るからこそ「ぼくなつ」にテイストが似てしまう」ということも言われています。

後者は当然といえば当然ですが、まさにその言葉を体現した作りで、大雑把に端的に片付けると…システム(大枠)は「ぼくなつ」(の流用)だと思うのと同時に「ぼくなつ」要素はそのシステム部分”だけ”でしかないという印象を抱きました。

発売(制作)の経緯や制限/制約、当然のごとく大人の事情が絡むことなので…下記の綾部氏のインタビュー記事(裏話)を読むと、いかに落とし込んだか、今作のストーリーになっているか、ということが分かります。

これを読むと正直「ぼくなつ」と比べるのは違う気もしちゃうくらいなんですけどね(笑)

ただインタビューで制作側も認識しているように「オラ夏」が醸し出す雰囲気だとか、そもそもとして売り文句にもなっている「っぽさ」で結局、一定数が「ぼくなつ」絡みの作品(続編/シリーズ)と判断してしまうでしょうし、その結果として『「ぼくなつ」と思って買ったら、違う!』と否定的な言葉が出てしまうのはもはや必然だなと。そして、その気持ちも非常に分かる後味なんです…。

だからこそ、この点(製作者の意図)を購入前(プレイ前)に知っていれば購入判断もそうですが、プレイした際に踏み外した感覚を抱くことはない(軽減される)と思ったので先に紹介しました。

個人的には、似ないように作っている=要素が省かれた(=手抜き)になっている気もしましたがね…(小声)

「オラ夏」本編の感想

さてここからはゲームの内容について触れていきます。

システム/コンセプト

まずゲーム進行は、1日単位かつ、朝/昼/夜の時間経過(マップの切り替わり/うろつきによる)で、強制参加のイベント以外はプレイヤー自身で自由な日常を過ごします。

これは先の通り「ぼくなつ」と同様のシステムです。

虫取り、釣り、作物の世話、新聞のネタ探し、地元の子供たちと遊ぶといったことが本作での”日常”で、それらによるコンプリート要素(図鑑、ミッション)も健在です。

ただコンプリート要素はストーリー内でそのまま埋まるものが多いのと、何をやればいいのかは「目標」として詳細がはじめからまるごと開示(表示)されているため、難易度は低め=やり込みが容易=大人はちょっと物足りなさがあるかなと。あくまでも子供(低年齢)も遊べることに重きがある印象です。

「ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇」©2002 Sony Computer Entertainment Inc.

あと虫や魚において「ぼくなつ」にあったサイズの概念がなくなっており、(数入手の目標はありはしますが)1度捕まえたら満足してしまいます。

自分自身で手に入れた昆虫を使っての要素である「バトル」や「標本」などもないため、必死に(おびき寄せるための)砂糖水を作ったり、木を漁ったり、虫取りに奔走する、「我先に誰よりもいいものを手に入れてやる!」という勝負欲、コレクター欲が失われています(現代っ子は虫取りしないのかもなぁ…)。

新聞社を大きくすることとそのためのネタ探しは面白かった点

日常と非日常

次にお伝えしたいのは「オラ夏」と「ぼくなつ」は同じようなゲームシステムながらも、それ以外の体感はまるっきり異なったものだったという点。

まず「オラ夏」は、輪廻転生(タイムリープ)的な1週間という”同一期間の繰り返し”がストーリーの重要な(強制的な)要因となっており、(物語世界にリアルに)恐竜が出現したり、不思議な道具を発明する博士が登場したり、伝記が運命を担っていたり、呪文を唱えることで世界を変えたりと、非現実によってストーリー成り立っています。

これは「クレヨンしんちゃん」のキャラやノリありき…もはやぶっ飛んだもので、むしろそれが本作の売りであり「クレヨンしんちゃん」要素が生かされた点であると思います。

すなわち「ぼくなつ」のモブキャラかのような主人公に自分自身を重ねる追体験感…きっとあった風景(場面)や、童心に帰るという類のリアリティは完全に失われているというか、そこを追求した作品ではありません。

「ぼくのなつやすみ」©2000 Sony Computer Entertainment Inc.

野原しんのすけという国民的キャラクターである5歳児を俯瞰しながら操作するという形は、同様のシステムであるからこそ(キャラゲーになるとこんな感じなんだなという)ある種の新鮮味でもありはしましたが、ここは好みが大きく分かれそうな点だと思います。

時代描写と懐かしさ

さらに筆者が「オラ夏」をプレイ中に強く感じたのは、「ぼくなつ」の描く時代とそこで味わう懐かしさが自分の中に作品(ぼくなつ)の印象として色濃く残っているということ。

そして「オラ夏」にはその印象を抱かないこと。

「ぼくのなつやすみ2 海の冒険篇」©2002 Sony Computer Entertainment Inc.

「ぼくなつ」は、大人になった主人公のボクくんが25年前/小学生の頃の夏(夏休み)を思い出すという構成であり、「ぼくなつ」の1作目~3作目は1975年(昭和50年)、4作目は1985年(昭和60年)を舞台にしています。2021年から見ると実に45年前!の夏休みなのです。

更にシリーズは一貫して(場所を変えながらも)自然豊かないわゆる”田舎”を舞台としていることで、時代描写との相乗効果で、(筆者は過ごしたことがない時代とはいえ)強烈にノスタルジックさを味わうものでした。

「ぼくのなつやすみ3 -北国篇- 小さなボクの大草原」©2007 Sony Computer Entertainment Inc.

そしてこの”懐かしさ”こそがゲームを遊ぶ大人になったプレイヤーたちが、時間も場所も風景も違えど、自分の幼き日の夏休みを思い出すという構図を作りだし、エモさを生み出していたのだと思います。

熊本駅の景観は2019年に建て替わった駅舎

反して「オラ夏」では現代をリアルタイムに過ごしており(いると思われる)、舞台は田舎ではあるものの「ぼくなつ」に抱くようなノスタルジック要素はありません。

現代設定で「ぼくなつ」感を味わえると言い変えることも出来ますが、「ぼくなつ」意識が強いと拍子抜けしてしまう点であるような気がしました。

次ページ:まだまだつづきます

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