今回紹介する作品はチュンソフトのサウンドノベルシリーズ/サウンドノベル・エボリューション第一弾「弟切草(おとぎりそう)」/「弟切草 蘇生篇」です。
「弟切草」/「弟切草 蘇生篇」とは…?
「弟切草(おとぎりそう)」は1992年3月7日にチュンソフトより発売されたスーパーファミコン用ソフトで、同社のサウンドノベルシリーズ(サウンドノベル・エボリューション)第一弾です。
2022年3月7日で30周年を迎えました!
スーパーファミコン版の発売から5年後の1999年に追加要素(主に「奈美」の視点/ザッピング機能)を加え、映像もリアルになってプレイステーションに移植されたのが、今回筆者が遊んだ「弟切草 蘇生篇(おとぎりそう そせいへん)」になります。
CEROは15歳以上対象の[C]。
ちなみにPS関連作品(アーカイブスなど)でタイトルに”蘇生篇”が付いています。
昨夏になりますが、サウンドノベルシリーズ第二弾の「かまいたちの夜(かまいたちの夜 アドバンス)」を遊んだことがきっかけで今回シリーズ第一弾の「弟切草(弟切草 蘇生篇)」もプレイしてみることにしました。筆者は「弟切草」自体が初プレイになります。
★「かまいたちの夜」/「かまいたちの夜 アドバンス」を遊んだ感想(↓)
あらすじ
夕暮れの山道、レジャーからの帰路を車で走る(本作の主人公)公平(名前変更可能)と助手席に座る恋人の奈美。
人気のない場所で道に迷ってしまい、そこに追い打ちをかけるように雷雨で車が大破したことで危機に陥った2人が助けを求めたのは、オトギリソウの花に囲まれた洋館。
ここに足を踏み入れたことで、洋館に潜む秘密に2人は近づいていくことになる…。
全体的な感想
特徴
本作はチュンソフトの「サウンドノベルシリーズ/サウンドノベル・エボリューション」であることからご存じの方も多いと思いますが、【サウンドノベル】…本を読むように文章を辿りながら、ゲームの特性として音(効果音・BGM)や映像効果が加わることで臨場感が増し、さらにプレイするという形でプレイヤー自身が物語の展開を決め(結末を導き)、それを見届けていくというところに面白さがあります。
「弟切草」はそんなシリーズの1作目(初作品)というともあって、2作目の「かまいたちの夜」と何かと比較されがちな面もあるのですが、2つの作品に【サウンドノベル】というジャンル以外での共通性は少なく、物語そのものはもちろんのことテイストも異なっています。
なにより「弟切草」は1作目であり、多少粗削りな部分も”初の試み”として評価したいところではあります。
今回「弟切草」をプレイして印象的だったのは「かまいたちの夜」は物語における各設定(主に人物描写)が固定化されている/変動しないのに対して、「弟切草」は(選択肢から導き出される)ルートや展開ごとに違った立ち位置になる要素が多く、各ルートで異なった物語が構成され、それぞれの結末が待っているということ。
特に「弟切草」はバッドエンドの概念がなく、それぞれの物語が(良し悪しはあれど)完結の形を取るのも印象的でした。
(わざわざ)「かまいたちの夜」と比べてしまうと大枠で見た際の整合性や完成度といった指摘になりかねませんが、筆者としてはシンプルに作風の好みだと感じましたし、どちらも比べる必要はなくそれぞれに違った良さがあると思いました。
物語の流れ
まず第一に「弟切草」の物語においては、「犯人を捜す」「真相を推理する」といった分かりやすい【答え】を追い求めることが目的ではなく、「弟切草」と「洋館に潜む秘密」を様々な視点でそれぞれの展開(のバリエーション)として楽しむといった読み物としての文学味、バラエティ色が強い作品になっています。
これはクオリティにまで言及したものではなく、(用意された)テーマと要素を踏まえながらも様々な顔/色を見せるという【調理方法】が楽しめるという言い方になります(なんだか擁護しているみたいですが…(笑))。
物語を進めていくうえで主要な通過点はいくつかあるものの、水槽、鎧、黒ネコ、ミイラ、西洋人形など多数のインパクトの強いアイテムと、そこに入る音(効果音/環境音)によってホラーテイストを濃くし、恐怖を煽っています。
やや意図的な怖がらせの印象は否めず、そこが重視されているあまりに前後の辻褄が合わなかったり、無茶を感じる点もあれど、各ルートによって小道具が色とその濃度を変える働きをしているのも事実です。
切羽詰まった状況でのキャラクターたちの能天気な言動の温度差がやや鼻に付きますが、(賛否はあるものの)面白さや個性(印象力)を生み出しているとも言えるのではないでしょうか?
筆者はこのチープさ嫌いじゃないです(これも擁護?(笑))
周回のやりづらさ
サウンドノベルにおいて必須の要素である周回について。
何度も物語を読み、選択肢の組み合わせを考える(楽しむ)ことで新たな展開/エンディングを生み出していくわけですが、今作はこの周回に対するユーティリティが不足しています。唯一、選んだ選択肢に次回以降チェックが入るくらいです。
フローチャートもなければ途中介入も出来ないため、毎回物語の最初からのスタートになることで、コンプリート(ピンクや金のしおり獲得を目指すこと)に対して「めんどくささ」を強烈に感じてしまいます。エンディングリストがないのも全貌が分からないという点で辛かったです。
システム面は作られた時代から仕方がないとはいえ、現代ではそこをネックとして挙げることになってしまうのはもったいないなと思いますね。
ピンクのしおり
エンディング10種を見ると(最低10周必要)、しおりが(念願の)ピンクに変わります。「ピンクのしおり」になることで、本能的に選びたくなっちゃうような(笑)際どい選択肢が増え、新たな気持ちで物語をもう1周楽しめます。
ただ前述の周回のめんどくささから「ピンクのしおり」にたどり着くまでは苦行でした…。
筆者は終盤まで自力で頑張っていたのですが最後の1つ(1エンディング)がどうしてもわからず、途中からは「モンスター家族」エンドばかり引き当ててしまったため、先人の力(攻略サイト)をお借りしてなんとか辿り着くことが出来ました…。
エンディング分岐にランダム要素を含むややこしさがあるためコンプリート(しおり獲得)を目指す方はある程度楽しんだあとは攻略サイトを見ることもオススメです。
PS版での要素
PS版「弟切草 蘇生篇」ではサウンドノベルシリーズでのちに生まれたザッピングシステム(別視点移動)によって主人公・公平の視点から時折、恋人・奈美の視点に切り替えて楽しむことが出来ます。
これによって物語における理解がさらに深まる要素かつ、(一部ではありますが)あの時奈美は…どこにいたの?何をしていたの?どんなこと考えていたの?を補完することが出来ます。
今「弟切草」を遊ぶなら?
2022年現在、「弟切草」を遊ぶ場合の選択肢は大体以下になります(※SFC版とPS版では異なる点が多いため、購入の際はご注意ください)。
スーパーファミコン(SFC)版「弟切草」
・ソフトを購入(実機でプレイ)・バーチャルコンソールでWiiUにダウンロード
プレイステーション(PS)版「弟切草 蘇生篇」
・ソフトを購入(実機でプレイ)
・ゲームアーカイブスでPSVitaにダウンロード
いずれも安価です(高騰していません)ので、気軽に楽しめます!
(C)Spike Chunsoft Co.,Ltd/長坂秀佳