【感想&レビュー】「天穂(てんすい)のサクナヒメ」~コメで強くなれ!米作りをリアルに描いた意欲作~(※ネタバレ少しあり)

【感想&レビュー】「天穂(てんすい)のサクナヒメ」~コメで強くなれ!米作りをリアルに描いた意欲作~(※ネタバレ少しあり)

目次

全体的な感想

良い:米作りとダンジョン探索のバランス

今作のポイントとして、前述の通り、米作り(育成シュミレーション)とダンジョン探索(アクション)という2つのジャンルをプレイすることになります。さらにいえばそれらが相まってRPG要素も生み出しています。

この2つのゲームジャンルが異なったもののため、好みや進め方に個性が出そうなものですが、そこを同時にバランスよく進めていくことが必要なゲーム設計になっています。

ゲームクリアのフラグとしてはダンジョン探索側(大龍/オオミズチの討伐)になるのですが、米作りにおける最低経年(稲作年月)やイベント発生によって、島の調査を進めていくダンジョンが順番に解放されるため、ダンジョン探索だけを独走させることは不可能です。

逆に米作りだけを先に進めるということは可能ではあるのですが、最低でも日常の素材(食料)集めにダンジョンに潜ることになります。

なにより大事な点として探索のためのサクナヒメの戦闘ステータスを上げることが出来るのは、米作りにおける収穫のみ(年に1回のみ)、かつその完成品のクオリティで左右されることになります。

米作り作業の合間にダンジョン探索を進めていくことが基本のスタイルではあり、ダンジョン探索によって特殊技(武技や羽衣技)のランクを上げることは出来ますが(最大10まで)、ステータスの上昇はありません。すなわち敵を倒す(ダンジョン攻略する)ことによるレベルアップはありません。

ちなみにダンジョン内において回復アイテムという概念もないため、疲れたら(HPが減ったら)回復をするためにダンジョンを離脱する(家に帰る)しか方法はありません。

まさにキャッチコピーの「コメは力だ!」を体現するシステムです。

探索における朝/夜

もう一つ、米作りと島探索を共存/同時進行させるバランスとして特徴的なのがゲーム内での時間経過とともに昼夜の切り分けがあること。特にダンジョンでは明確な差が出ます。

ここでも目にやさしくない文字の大きさ

まず敵の強さが昼夜で明らかに違います。

ダンジョン毎に敵の強さの指標があるのですが、それプラス日中の強さと夜の強さがあり指標が違います(画像赤線)。この差分がかなり大きく、昼間に平気で過ごせていても夜は苦戦することになります。上のダンジョンで言うと、昼12+/夜30と2.5倍の差です。

この差分は昼間と同じノリで夜もうろうろしていると速攻でやられるレベルです。

これはコツや操作テクニックでどうにかなるレベルではなく、ステータスを上げるしかないと断言できるものであり、あわせて前述の通りダンジョン内で回復出来ない/HPは減るだけのため、家に帰る(ダンジョンを離脱する)しかない&(レベルアップしないため)無理に頑張っても得るものはなにもないのです。

次に夜のダンジョン内は暗いため、明かりを灯す”油玉”というアイテムが必要になるのですが、この”油玉”を生成するためには素材である”油”の入手が必要になります。

この”油”は物語の後半になると交易品としてお米との交換で手軽に手に入るのですが、序盤は入手が難しく(ドロップ数が少ない)、”油玉”が作れない=夜の探索が物理的に無理(難しい)という状況が多々発生します。

ダンジョンにばかり潜っているとお米の世話が疎かになることは容易に想像できますよね?

そうするといいお米が出来ない=戦闘ステータスはいつまで経ってもヘボいままで同じダンジョンをぐるぐるするのが限界です(強くならない=無駄足)。結局「お米作りを(も)頑張ろう!」と自然に導かれるはずです。

ここまで「片方ジャンルだけ進めれないよ!」とあまり良くない表現(マイナス表現)になってしまったかもしれませんが、米作りも島の探索もそれぞれに面白さがあるので、米作りはやりたくない(島の探索はやりたくない)とはなりません。バランスよく進めていくことが全く持って苦ではないのです。

単純にゲームとしてうまい作り(フラグ管理)だなと思った点です。

良い:米作りの本格性

今作が世間的に注目された/今作を有名にした最大の理由は…米作り(稲作)の再現性でしょう。

米作りの流れ、細分化された作業とその量の完成度が本作における醍醐味の一つです。そしてこの作業工数の多さが生み出しているのは、お米(完成品)への愛着であり、決してめんどくさいが先に来ることはありません。

ゲーム内での1年間は各季節3日の12日周期、この四季サイクルを通して米作りと向き合っていきます。

スケジューリングや作業内容は自動的なチュートリアルはありませんが、(島で一緒に暮らす)田右衛門によって、今やるべき作業や期限をふんわり教えてくれるサポートがあり、米作りにおいて何をしていいかわからない…とお手上げ状態になることはありません。

失敗や経験で学べというヒントは少なめのスタイルですが、最低限のフォローをして貰えるという感じです。

これについてはゲーム内ストーリーに乗っ取った状態(突然米作りをやることになったサクナヒメの立場)でもあり、「最初からうまくいくわけない」と、プレイヤーが感情移入しやすいポイントでもあります。

他にも島の探索や年月の経過などで集まっていく、豊穣神のサクナの母が記した「農書(米作りにおける知識書)」を稲作会議と称して読むことでもプレイヤーが米作り作業の知識を深めて、自身の田畑に取り入れる(かは自分次第)という判断が出来ます。

作業工程の多さ

今作で行う米作りの工程は以下。

ゲーム性はボタンによる単純作業ではあるものの手間の生み出し方が秀逸で、(リアルに寄せているとはいえ)ゲームとしては凄まじく綿密な描写です。

田植期:田起こし、種籾選別、育苗、田植え

育成期:水やり、肥料、草むしり、害虫・益虫(対策)

収穫期:稲刈り、稲架掛け、脱穀、籾摺り

そして各作業においても、さらに複数の選択がプレイヤーの判断として発生します。

日常的なところでも作成する肥料の配分、(ランダムですが)天気影響、雑草、害虫対策など、事細かな作業ひとつひとつそのどれもが米作りにおける大事な要素であり、その年のお米のステータスに反映されます。

筆者のように米作りをしたことがない、知識も無かったド素人でも、作業を繰り返すことによって、1年のサイクルに慣れ(覚え)、肥料の配分、苗の撒き方、水量、温度の判断タイミングなど様々な知識、作業が染みついていきます。これすなわち農家になった気分を味わえます(なめんな)!

たまにはのんびり休んでみたり

このプレイヤーの選択や判断の反映が非常に事細かに数値化されており、些細なところでも作業を怠るとその分完成品のクオリティが下がります。

この辺のステータス変動も秀逸で0か100かという極端なものではなく、項目も数値も細分化されています。手探り作業が長く続くためお米が完成するまで毎年ドキドキワクワクです。

たとえば、はじめはとにかく【収穫量】を重視していた作り方も数年経つと、【量≦クオリティ】を意識しはじめ(【量≧クオリティ】が間違いなわけではない)、作業においてどこで何をすればいいのか、昨年と変えるべきか否ということを考え、見極め始めます。

それらは正解不正解に二分されるものでもないため、この試行錯誤がまた中毒性を生んでいます。

作業における判断を行うのはもちろん自分(プレイヤー)自身であり、米作りの工程が多数あることでさまざまな選択、どの工程で何を選ぶのかによって自分の意志で完成品の品質をコントロールしていきます。

そして自分好みのカスタマイズによる細かな変化を”お米”というリアルで身近なものとしてゲームで気軽に手軽に味わうことが出来るのです。

この、育成的概念と手間が完璧に融合しており、経年とともに米作りがより楽しいものとなっていきます。

作業効率/成長と開発

工程は多数あれど毎年恒例の作業は半ば単純作業では?と思われそうですが、そこに刺激を与えてくれる要素があります。

まず1つ目は各作業それぞれが回数を重ねる度に、サクナヒメ自身の(身体)能力アップに繋がること。

これは最初の頃はちまちま1つ(1マス)づつやっていた作業(耕作、種まきなど)の反映範囲が広くなる、速度が上がるなど楽になります。

2つ目は経験したことによる気づきや仲間の助言、協力によって生み出されていく農具の開発。これにより作業の効率化や、操作における変化が生まれます。

そしてこの要素で良いなと思ったのが段階的な変化。

各工程において農具が開発されたからと、1の次は10へ飛ぶわけではなく、2段階、3段階と順を追った作業効率化になっており、このバリエーションの多さは工程の多さもあって作り込みの部分で褒められる点です。米作りを長く楽しむことが出来た理由はここにもあります。

プレイヤーの成長

サクナヒメの成長はゲームだからこその要素ではありますが、プレイヤー自身も米作りにおいて知識はもちろんのこと、お米を育て続ける地盤の変化や天気などの感覚的なことにすら敏感になっていくほどの没入感やリアリティがあり、お米に対する探求心が沸きまくりです。

この徹底されたリアリティは「攻略情報は農林水産省のホームページ」と言われるほど。

楽しく学べる、遊んでいるのに詳しくなれるというのは、遊ぶだけではない視点(お米への興味や生産者への想い)、ゲームの発信力(影響力)、新たな可能性など好意的、魅力的な点であると言えるでしょう。

良い:アクションの面白さ

次はアクション要素側の島探索パートについて。

本作は【米作り】というジャンルの珍しさからそちらが注目&称賛されている印象でアクション側が隠れてしまっているのですが、侮るなかれ!アクション要素も米作りに負けず劣らず。

むしろこのアクション部分も込みで作品が絶賛されていると思う面白さです。

スタイルとしては横スクロールでワラワラと沸く敵をバサバサとなぎ倒してダンジョンを進んでいきます。このすべてを巻き込んで攻撃が連鎖していく流れは非常に爽快感があります。

そして通常攻撃(強/弱)と各種設定する武技攻撃や羽衣攻撃などの特殊攻撃の組み合わせで、さらにスタイリッシュさが増して敵を一掃する気持ち良さがあります。

武技攻撃は基本は広範囲巻き込み攻撃なのですが、それぞれの技に個性(動きの違い)があり、使い分ける楽しさもあります。

この画面いっぱいの「何が起きているのかわからない」に中毒性があり、これだけの混雑画面にして処理の重さやカクツキを感じることもなく快適にプレイできました。

特にストーリーとは別に自由に攻略していく天返宮(あまがえしのみや)という階層(1~100)ダンジョンは戦闘だけに特化しており(ギミックを駆使する必要がなく)、半永久的にこのワラワラバサバサバトルを楽しむことが出来ます。

良い:島探索の手軽さ

合わせて島探索/アクション部分をより楽しさに重点が置ける要素として、ダンジョン内ではいつでも、(ラストダンジョン以外)どこでも、戦闘中だろうとも離脱する(家に帰る)ことが可能です。

残り体力的な面が大きいですが、日が暮れる前(夜になる前)になど、ダンジョンの現在位置ではなくプレイヤーのタイミング(都合)でボタン一つで探索を切り上げることが出来ます。

緊張感は生まれませんが、このゲームの売りはそこではないなと思いますしゲームオーバーの概念がない手軽さはいいなと思いました。

良い:献立の豊富さ

サクナヒメの毎日には食事の概念(食べる選択肢)があり、ダンジョン探索や交易で手に入れた素材で(島で一緒に暮らす)ミルテが料理を作ってくれます。

食事は献立になっており、自分で料理も数も変更することが可能。豪華にも貧相にもできるのですが、それらが食事風景での描写にも反映されます。

料理の数がどれほどあるのかが分からなかったのですが、結構作れるものが豊富にあって素材集めをする楽しさもありました。

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