今回紹介するのはSteamで遊んだ1作「When the Past was Around 過去といた頃」です。
「When the Past was Around 過去といた頃」とは?
「When the Past Was Around/When the Past was Around 過去といた頃」は、2020年9月に「Toge Productions」より配信されたポイント&クリックによる謎解き要素を主軸としたアドベンチャーゲームです。
製作はインドネシアのインディーゲームスタジオ「Mojiken」と、先日紹介した「A Space for the Unbound 心に咲く花」と同じタッグというのに惹かれて今回遊んでみました。
★「A Space for the Unbound 心に咲く花」の体験版の感想記事(↓)
★「A Space for the Unbound 心に咲く花」のクリア後の感想記事(↓)
(2022年現在)Steam、Switch、PS4/5、Xbox、さらにはアプリ配信もされており豊富な機種(サービス)で遊ぶことが出来ます。パッケージ版:なし(×)、日本語対応:済(◎)、CEROは全年齢対象の[A]。
クリアまでのプレイ時間(ボリューム)は、2~3時間程度(筆者は約2.5時間)。
”謎解き”におけるひらめきの速度によってプレイ時間は変動しますが、価格(820円/Steam)を含めて気軽に手軽に遊べるかつ、ゲーム性、ストーリー内容、音楽すべてにおいて価格以上の満足感を得られる1作です。
「When the Past was Around 過去といた頃」の感想
キャラクター
登場するキャラクターは、主人公の女性:eda(エダ)と、(フクロウの姿/顔をした)男性:owl(オウル)の主に2人。
作中では【owl(オウル)】と記載があるエダの彼氏ですが、【owl(オウル)】=フクロウの姿(顔)を模した俗称のようであり、そもそも彼だけが人間ではない姿(顔)をしているので「作中の写真の顔が(意図的に)明かされていない」ことを含めて擬人化された姿、エダの思い出(精神世界)を強調した個性という解釈です。
ただフクロウの姿(顔)/(フクロウの中でもミミズクのような見た目)という一見異様な風貌こそが物語世界にプラスに作用しており、表情の変化、仕草による柔らかさ(やさしさ)の表現によって非常に魅力的な人物として存在感を際立たせています。
特徴
本作は全編を通して”文字や言葉による情報はなく、プレイヤーが物語を進行させていく中で見たもの(絵)/聞いたもの(音)が全て”という「想像で補完する」ことが特徴(の一つ)となっています。
そんな重要な要素である”絵(イラスト)”…エダの記憶を紡ぐ丁寧であたたかなBrigitta Rena氏の描くイラストと、”音(音楽)”…キーアイテムである”バイオリン”が主体となる、場面毎に合った気持ちを乗せる音楽たち。
この2つの要素のクオリティの高さによってプレイヤーを物語へといざなってくれます。
本作の雰囲気を理解するには予告を見てもらうのが1番早いです(後ろに流れているのはタイトルと同じテーマ曲「When The Past Was Around」)。
「あらすじ」こそが物語そのもの(ネタバレ)となってしまうため紹介は自粛しますが、本作は『誰しもが味わうであろう(味わったであろう)、「挫折」と「喪失」を乗り越える物語』です。そして、プレイヤーとして主人公・エダの葛藤を見守り時に手助けをする、思い出を辿る中で一人の人生の岐路/再生への濃密な時間を見届けることになります。
物語をどう解釈するのかはプレイヤーに委ねられている部分もあるものの主軸やテーマはシンプルかつストレートです。
謎解き要素
謎解き要素は「2人が過ごした日々を追想し、新たな扉を開いていく」というエダの心情に直結した機微を感じられるものです。
そして植物が彩る日常の風景と、そこに存在する身近なものがふんだんに使われたトリックは、解き明かす際に必要なものをイメージしやすくなっています。
この日常味が謎解きにおいて直接的なヒントはない中でも「何を探せばいいのかわからない/何に使うのか分からない」ということを排除しており、進行を阻害されることがありません。
たとえば…
「花を育てるには…?」→「水がいる」→「水を運ぶ(入れる)ものを探せ!」といった具合ですが、これが逆のパターンでも繋がりやすくなっており、先に「バケツ」を手に入れた際、その時用途が分からなくてものちに「花を育てるには…?」と直面した時に「これが使える!」と繋がるわけです。
紐解いていくエダの思い出は章仕立てになっており、段階的に1カ所で行っていた謎解きが、2カ所、3カ所を跨ぐようになっていきます。1カ所(1部屋)だけでは解けない(完結しない)残留物が出てきたり、持ち越すアイテムが出てきたりと(難易度という点で)やや混乱を起こしそうな場面はあります。
ただし大前提として、本作において「無駄」なもの(アイテム)は1つもなく、あとで絶対に解けるようになっている/使うようになっています(逆にボーナスアイテム要素もありません)。
探索中に何か少しでも引っかかる点(特に暗号や記号)はその都度メモなど記録しておくと、ロック解除を要求された時に「さっきのあれが使えるかも!」と気づくことが出来ますし、把握できる程度の適度な引継ぎ量であると言えます。
イラストから読み取る要求も先述のイラストの完成度もあって理解しやすく、何より隅から隅まで探したくなる/触りたくなる、”謎解きを楽しめている”と思えたことが筆者としては大きかったと思います。
操作性
本作と同様にポイント&クリックの謎解き要素のある作品全般に言えることでもありますが、画面全体/部屋や場所にある物を生かした細かいギミックが多い=移動とクリック作業が多いことや、”奏でる音”をイメージした浮遊する音符を追いかけたり(時間制限あり)と、本作の良さであるはずの要素がコントローラーやスティックでのプレイによっては操作性で評価が多少割れてしまいそうな印象を抱きました。
筆者はSteamのゲームは(対応していれば)コントローラーでプレイしますが、本作に限って言えば圧倒的にマウスの操作感が良く、早々にマウスに切り替えました。PC版(Steam)で遊ぶ方はマウスがおすすめです。
さいごに…
最後に映るのは髪を切ったエダ。
思い出をメロディーに乗せて、2人で作り上げた曲を演奏しながらエダが迎える夜明け…。
この表現こそ彼女が「受け入れた/乗り越えた」ということを意味しているんだろうなぁ…とグッときました。言葉がないからこその表現を味わえる本当に素晴らしい1作でした!
公式Youtubeでサントラも配信されており、エンドロールで流れる名曲「When The Past Was Around」も聞くことが出来ます。
少しでも興味が沸いた人はまず各ハードで配信されているプロローグを遊べる【体験版】に触れてみてください。作品の持つ世界観は十分に味わうことが出来ますし、ここで惹きこまれれば間違いなく楽しめる1作です。
©Developed by Mojiken Studio and Toge Productions.