今回は「FF7R」で「FF7」との表現(展開)が違った場面の中で個人的に1番好きだった「給水塔の約束」について、リメイク版「FF7R」とオリジナル版「FF7」を対比しながら考察していきたいと思います。
「給水塔の約束」とは?
「給水塔の約束」とは…クラウドとティファが7年前に故郷・ニブルヘイムの給水塔で交わした約束です。
故郷のアイドル的存在だったティファを夜の給水塔(村のど真ん中)へ呼び出した中二病のクラウドくんは「春になったら村を出ること」「(英雄)セフィロスのようなソルジャーになること」を(わざわざ)高らかに宣言します。
彼は当時14歳の思春期真っただ中ですから、思春期経験者(大人になった私たち)は彼のこのイキった言動を多少なりとも理解してあげたり、ほほえましく思うことは出来ますよね。
そしてここで交わされた約束は、クラウドの「ビッグになる!」宣言を受けたティファから発された「クラウドが有名になって、その時ティファが困っていたら助けにきてほしい」というもの。
「ピンチのときにヒーローが助けてくれる」というのを1度経験したいと。
ちょっと唐突で強引なこのお願いも、大好きなティファから頼まれてまんざらでもなく約束するクラウド。ここが7年後も有効な約束が交わされた瞬間です。
ティファの心情
まず、この約束を交わした時のティファの心情ってどんな感じだったのでしょうか?
当時特別に仲が良かったわけでもなく、既に形成されたひねくれ不愛想なクラウドから突然呼び出されカッコつけられたティファ。
そんな彼に花を持たせてあげるために発した感が強い印象を筆者は抱いていたのですが、のちに彼女は「約束を交わしたことをきっかけにクラウドのことを気にかけるようになった。」と語っています。
ティファは村の男子の憧れの存在で、彼らはライバル同士で互いにけん制し合っていたせいで(おかげで)、彼女は誰からもアタック(告白)されてこなかったのでしょう(オリジナル版「FF7」でのよろずやの息子の手紙もといラブレター参照)。
そんな中、クラウドも愛の告白ではないものの(顔は良い)男子にわざわざ呼び出されて、夢を語られて、約束まで交わしたともなれば、ここがクラウドを意識し始めたタイミング、起点(印象的な思い出)になっていることに納得はできます。
★約束を交わした際のティファの心情はのちに小説で語られています(↓)
★ティファとクラウドの関係については別の記事で紹介しました(↓)
約束におけるオリジナル版とリメイク版の扱いの違い
クラウドがこの「給水塔の約束」を思い出すタイミングは「壱番魔晄炉作戦」の後、「伍番魔晄炉作戦」の前とタイミング自体はオリジナル版とリメイク版で同じなのですが、一連の流れやきっかけ、そして印象は全く異なっていました。
オリジナル版では…
「給水塔の約束」に関するオリジナル版とリメイク版の違いは主に【ティファの「アバランチ」への参加意思や活動への意欲】とその描き方が大きく関わっています。
ティファが思い出させる
オリジナル版「FF7」では反神羅組織「アバランチ」の活動に積極的に参加しているティファ。
リメイク版「FF7R」と比べると(序盤は特に)活動に対して悩みを抱えているような様子は描かれておらず、彼女の意思というよりは「アバランチ」の活動への布教の意味合いで「星の命を救う」ことを理由にクラウドに組織の計画への参加を依頼(もはや強要)してきます。
「壱番魔晄炉作戦」の後、ティファの待つ「セブンスヘブン」へ帰ってきたクラウドはバレットと揉めてしまいその場を立ち去ろうとします。
そしてその際にクラウドを引き留めることと「アバランチ」の次の目的である「伍番魔晄炉作戦」に彼を参加させるためにティファが「給水塔での約束」を対価として条件に出してきます。
そしてここでの会話の流れでティファが(無理やり)「給水塔での約束」を思い出させたような(ように受け取れる)展開になっています。
これによって、「FF7」のティファが「給水塔での約束」を果たして欲しい理由は、自分自身のためにというよりも、星の命を守るという「アバランチ」の活動のため(「アバランチ」の活動がド素人丸出し&人員不足でピンチだから)という風に感じました。
筆者は上記のように受け取った結果として、「FF7」プレイ時には「給水塔での約束」自体の重要度を感じることが出来ていませんでした。
というのも「壱番魔晄炉作戦」に参加していなかったティファが(何も知らないプレイヤーに)突然「星の命」がどうとか強めに言ってきたり、「給水塔での約束」も強引に押し付けられた感があったりと「今それ(約束)の使いどころなの?」「自分のために使うんじゃないの?」と思っちゃったんですよね。
メタ的に言っちゃうと「あくまでもクラウドを次の作戦に参加させるための作られた設定(理由)なんだろうな」って透けて見えちゃって…。
なによりクラウドが約束を思い出したにしては、無下にするようなひねくれた応対をしています。
実際には「給水塔の約束」(の記憶)がのちに物語の起点となっていたことが分かったり、「FF7」の物語においてとても重要な出来事に間違いはないのですが、「FF7」内では目的そのものがブレていてそんなに大事に扱われていない印象でした(※個人の感想です)。
リメイク版では…
オリジナル版の流れを書いたので、次は同じ視点でリメイク版について。
リメイク版でのティファは「アバランチ」の活動に(オリジナル版ほど)強い意志を持っておらず、思想が揺れているせいでジェシーに嫌味を言われたり、プレイヤーから見ても「じゃあなんでティファは「アバランチ」の活動に参加しているんだろう?」と疑問を抱かせるほどに優柔不断さ(悩む姿)が描かれています。
「FF7」経験者としては彼女が味わった「5年前のニブルヘイムでの騒動」を思えば、神羅を憎む気持ちから反神羅組織である「アバランチ」の活動に参加していることに納得できるのですが、そのニブルヘイムでの出来事(の詳細)を知らない初見者は余計に「どうして?」と感じる場面が(現時点では)多かった気がします。
ただリメイク版のティファは、オリジナル版と比べると「アバランチ」の活動に参加しつつも自分の恨みの気持ちだけには傾倒出来ない、切り離せないとはいえ民間人への影響を防ぎたい、関係ない人を巻き込みたくない気持ちの部分との葛藤が見えますし、そこがうまく表現されていたようにも思います。
クラウドを「アバランチ」の活動に誘ったとはいえ、その行動を(おそらく関係のない人を巻き込んでいるという意味で)「軽率だった、反省している」と謝罪もしています。
リメイク版でのティファは、より人間臭さや彼女の人となり(性格)、優しさが描かれている印象です。
ティファの「アバランチ」の活動に対する心情/ミッドガル(スラム)への思い入れについてはのちに刊行された小説「FINAL FANTASY VII REMAKE Traces of Two Pasts」にて読み取ることが出来ます。
★小説はニブルヘイムの壊滅から今日までの空白の5年間を埋めるエピソードが描かれています(↓)
次ページ:リメイク版では…つづき