【感想&レビュー】「ワールドエンド・シンドローム」~ひと夏の思い出は儚くも美しく~(ネタバレなし)

【感想&レビュー】「ワールドエンド・シンドローム」~ひと夏の思い出は儚くも美しく~(ネタバレなし)

目次

物語の感想

ここから先は前頁より多少ネタバレを含んだ感想になっています。ストーリーにおける核心的なネタバレはしていませんが、閲覧の判断には十分ご注意ください。

序盤は我慢

本作でやや引っかかるのは、主人公の目的が分かりづらいというか、ない。明言されていない。ことから、プレイヤーにとって物語そのものが「なにを目指しているのか」が不明瞭な点です。

メタ的に言えば女の子を攻略している(そこから真相を紐解いている)わけですが、大々的に提示されている「町の伝承」に迫る行動を取ったり、「黄泉人」と呼ばれる人ならざるものの正体を追ったりしていくわけではありません(追っているような物語の展開になっていません)。

その点において、主人公は(本人が抱える個人的な問題による)目の前の現実から逃げるために魅果町にやって来た。ということが理由込みで序盤に説明されており、すなわち転校先で成り行きで「ミス研」に加入し、夏休みは週に2回その活動に参加しているということ以外にはやることがない(特別な目的はない)わけです。

そして伝承や事件についても偶然に知ってしまった、関わってしまったという程度で誰かに行動を指示されているわけでもありません。本人自身はただ夏休みを過ごしているだけなので、傍から見たらだらだらうろうろしかすることがない(感じになっている)というのは理解はできます。

とはいえゲーム(作品)や物語という部分で、この目的や主軸の見えなさ(感じづらさ)、起伏のなさによって全体がふんわりとしまっているようにも感じます。事実序盤は動きがなくちょっと退屈だったりします。

あわせてそれぞれの女の子たちのルートもストーリー展開上、伝承や事件の謎に遠い人物から攻略することになっており、最初から攻略できる2人のルートに関しては町に潜む謎に全く触れていないといっても過言ではないレベルで手ごたえがないです。

真相に近づいていないとひっかかることもないくらい無難な恋愛シュミレーションゲームをやっている感覚です。

実際には女の子5人それぞれが「謎」に起因するキーを持っており、複雑に絡み、ねじれてしまっているそれらを個別ルートで紐解いているわけなのですが、そのことに気づくのは3人目のルートあたりです。その前に離脱者が出てしまいそうだなと心配になる序盤の動きのなさは残念な点です。

繋がりに気付いてからはエンジンがかかりグッと引き込まれ加速していくので、「最初の2人までは我慢して!」としか言いようがない…(笑)というのが難点かなと。

ルートの繰り返し

5人の女の子の個別ルートすべてを見ることは攻略において必須のため、必然的に同じ期間(約1か月)を5回繰り返すことになります。

もちろんそれぞれ個人に起因するテーマがあるため、接点の違いによりストーリーは異なりますが、同期間と同範囲(町の中)での繰り返しという点で、マルチサイトシステムのようにそれぞれの動きが徐々に明確になっていく点は面白かったです。

毎週木曜日に予定がある人物、バーや病院で見かける後ろ姿、人気のない森の中での遭遇、神聖な場所での登場などキャラとそぐわない意外なところで出会ったり、偶然見かけた彼女たちそれぞれの行動に意味や理由があったこと。

個々に見ると謎が先行し疑心暗鬼になる不穏な行動が適当に出没していたわけではなく、それぞれの物語が進行していくなかで時々に交わっていたことが各ルートでの視点で見ることによってわかります。

恋愛要素については見方による

個別ルートの内容(展開)については、町を歩き回るというシステムとストーリーとの裏付けが出来ていますが、恋愛描写はそこに多少のスパイス程度という印象。

あくまでも好感度を上げるため(攻略するため)に彼女たちを追いかけている(ぶらぶらしている)という感じは拭えませんでした。

その印象を持ってしまった一番の要因は、主人公も相手もお互いに惹かれたタイミングが全くといっていいほど分からないこと。

個別ルートとはいえ恋愛的なイベントやインパクトが少なく、ある日突然「すき」といわれて「ぼくも」なんて言うルートが多いのですが、こちらとしては「なんで?」「どこで?」という置いてけぼり状態が多かったです。少なくともどちらかはスイッチが入ってくれる描写がないとキツイな…無理がある。という感じでした。

全員ではないですが、要素がある以上はなんでもいいからどこで惹かれたのかというインパクトのある一幕は欲しかったですし、主人公の心の声がもっとあっても良かったかなと。ベタなので良いんですけどそういうのも少なかった気がするんですよね…。

たとえば他の男性から告白されて(好意を示されて)いながらに主人公を選ぶ人物が2人いるのですが、どちらもなぜ告白してきた方ではなく、モーションをかけてもいないただ町で時々会う(ように動いているだけの)主人公なのか?ということが語られていません。

告白してきた人物が優良なため尚更「なぜ主人公の方が良いのか」が引っかかってしまいました。

さらに女の子側からの好意については彼女たちの心の声が聞こえないのでわからないにしても、主人公がそれぞれに惹かれている描写もどのキャラにおいてもない(うっすーい)ため、結果的にかけひきのドキドキワクワクがなく質素な印象でした。

大半が、追いかけていただけで好意持ってくれていた、向こうから好きって言われたからノリで付き合っちゃう!という結構ゲスい想像に変換されてしまいます(笑)

ミステリー×恋愛アドベンチャー

今作のゲームジャンルについて少し触れておくと、公式でうたわれているようにミステリー要素と恋愛要素が共存しています。

ただ濃度についてはどちらも薄目というかどちらかに重点が寄っているわけでもなく浅い印象で、よく言えばライト、スタイリッシュさを持っています。

バットエンドになる可能性の方が低い(選択肢が少ない)ので、話がこんがらがるということもなく、少ない分岐点をあえてバットで選ぶとなおのこと、選択肢による分岐の変化(なぜバットになってしまったのか)が(のちに)理解できます。

伝承という目で見えにくいものや、(主人公/プレイヤーが)部外者という町に対する知識がない状態であることから、人の動きが見えず全員が怪しい。という不穏な雰囲気にざわざわとはしますが、常に張りつめているような恐怖はありません。基本的には日常、青春を過ごしていた割合の方が強い印象でした。

ミステリーに関して言えば、謎解き要素はないため、あくまでも読み物、読解としてそのジャンルを楽しむ形です。

真相と伏線回収

【本編】を完遂し迎える【真相編】では【本編】ラストの女の子のルートから繋がり、本作にちりばめられた謎(トリック)のすべてを知ることになります。

★ネタバレありの考察記事はこちら(↓)

なにより【本編】の個別ルートはそれぞれ独立したストーリーではあるものの、それらが集まることによって最後の【真相編】が綺麗に繋がります。

結果的に【真相編】を見る(真相を知る)ために5人のルートを辿って来たとプレイヤーは感じることが出来るストーリー展開になっているのです。

ミスリードもうまく潜ませてあり、実際それが「ミスリードでしたよ。」とわかるような説明が入る(会話の中で理解出来る)のも良かった点。個別ルート内での出来事についても解説が入り、消化されずに残っているものがあるということはく、相違や消化不良感も筆者は抱きませんでした。

ここまでに少しづつ触れたり、集めたりした要素(キーワード)が最後に繋がる、昇華されるというのもピースがはまる感覚がありましたし、オチについても徐々にではなく一気に繋がるので最後の最後まで筆者は予想出来ておらず、真相に衝撃がありました。深読みしなければ誰しも驚き&納得することが出来るはずです。

最後のTips。グッとくる。

【真相】に辿り着き、9月1日から始まる新たな人生。明るい未来を予感させるラスト。

とともに…明らかな続編臭を残していきます(余談:続編についての情報)。

本作の続編か新作なのかはわかりませんが、雰囲気が継承された作品をまた是非プレイしたい!と思える本作の満足度でした。

(C) ARC SYSTEM WORKS/TOYBOX Inc.

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